CAROL

■LOVERSOUL
■吉里吉里2/KAG3
■ビジュアルノベル
■18禁
http://www.high-octane.org/

                                 (2003.11.19)
▼あらすじ
幼いころに連れてこられた「教団」。
そこは孤児院に似た施設。そこは悲しみに満ちた施設。
そして、「奇跡」を執り行なう謎と権力に包まれた施設。
施設に入ってから七年、俺はそこを脱走した。
警察に保護され、病院で検査を受け、ようやく家へ戻ることができた。
片手には意志、片手には限りない希望、そして何者にも縛られることのない自由。
ああ、普通の生活ってこんなにもまぶしいものだったんだ……。
だがそれも束の間のことだった。
すべてが。そう、すべてが予定されていた事を、俺は身をもって知ることとなる。
▼概要・システム
 ごくごく普通のビジュアルノベル。基本的には学園を舞台にしているが、各女の子のルートに乗るとそれ相応の舞台で物語が展開してゆく。システム面は吉里吉里2準拠。だが、それに頼りすぎているような点もあり、プレイアビリティを欠いているような気がしている。
▼シナリオ・テキスト
 シナリオの方は前半が学園モノ、各女の子のルートはSF3割、伝奇5割、魔法使い2割といったところ。「教団」というのは子供たちを集めて「奇跡」、いわゆる超常能力を開発させているような組織で、漫画『スプリガン』の「COSMOSプロジェクト」や『Routes(Leaf)』の主人公が幼い頃に所属していた機関に近いです。そこで開花した主人公の能力がキーとなって各シナリオが終わる感じ(全部が全部、そういう訳じゃありませんけど)。攻略可能な女の子は5人。だが、シナリオの消化不良気味なところと相まってか、「終わった〜」という達成感はあまりない。ボリュームは結構あります。プレイ時間は、大体15〜20時間ぐらい。

 テキスト面はそれほど悪くはない。とはいえ、手放しで褒めるものでもないです。プロローグの寒さや、数人で書かれたためかルートによって主人公の印象が変わってしまうのは少々マイナス。確信的に様々なネタがテキストのところどころにちりばめられており、人によっては分からなかったり、不快に思ったりすることがあるかもしれません。また、いかにも萌えを狙っているかのようなテキストもあり、個人的にはあまり好みではなかった。戦闘シーンもあるが、それほど燃えません。どのシナリオも全体的に盛り上がりに不足している感があります。エロは基本的にひとり一回。特殊なシチュエーションもあり、尺の長さもまずまずだと思います。でも、クリア後のシーン回想モードはありません。
 ここからはシステム面に関わることですが、使用するフォントにより1画面中に表示されるライン数が変化してしまいます(1ラインに表示される文字数が変化するため)。妙な違和感があるので、どのフォントを使用しても変わらないような配慮をすべきだったのではないかと思います。また、ルビが振られている漢字が多数あるが、行間が狭いために非常に見づらい。このあたりももう少し気を配って欲しかった。テキスト履歴もかなり使いにくい。せめて現在画面に表示されているテキストは履歴で見られなくともよかったのではないでしょうか。あと、テキスト履歴が強制的に明朝に変換されているのはシステム上の仕様かな?
▼イラスト・グラフィック
 キャラクター関連を描いているのはふたり。それぞれ数キャラずつ担当しているため、そのあたりを割り切れば特に気にならない。立ちグラフィックの種類も豊富でCGの枚数も多い。クリア後にCGモードで閲覧できるのもいい。だが、塗り技術の差がものすごいのがネック。例えば同じ原画家でも立ちグラフィックの主線の太さが違ったり、イベントCGの塗りの差が一目瞭然。塗った人が違ったり、作業中にレベルが上がって昔に塗ったものと差がでてしまったりと色々な要因はあるかもしれませんが、可能な限り統一をとって欲しかった。なお、イベントCGの出来は玉石混淆。素晴らしく描き込まれ塗り込まれたものから、ラフにざっと色を塗ったものまでいろいろ。全体的にイベントCGの背景はおざなりです。背景はCG+実写。実写の背景は、素のままとエフェクトをかけたもの。この辺りもバラバラなので、どちらかに統一をして欲しかったです。CGの背景はかなりレベルの高い感じです。
▼サウンド・SE
 曲数は22曲。曲数はかなりの数ですが、正直なところあまり印象に残った曲がありません。SEももちろんアリです。オープニングはムービーでヴォーカル付き。エンディングはflash。どちらもクリックで飛ばせないのが残念です。
▼総評
 個々のパーツで見ても結構良い。同人ソフトというカテゴリーで見ても、全体的なレベルは高いと思う。だが、内容のすべてが高くわけではなく、ちぐはぐ、ばらばら、適当、仕上がりが雑、といった欠点も多く抱えている。パッケージやバックカードに載っているイラストやCG、あれらがこのソフトのクオリティの上限。イラストが好みで購入を考えるなら、あれらより上のCGはないが以下のCGはかなり多く収録されていることを覚えて置いてもらいたい。製作期間の問題があるのは重々承知だが、今しばらく全体のクオリティアップ(正確にはクオリティの平均の上限を上げる)ができていたら、個人的な評価はもっと高かったと思う。
 だいぶ盛り上がりに欠けてはいるものの、つまらないわけじゃありません。個人的には源頼子(の前半から中盤)や美岬先輩(の前半から中盤)は、結構楽しく遊べた。ライトなノリの学園モノ兼伝奇っぽいもの、もしくは妹萌え萌えな人、そしてエロもなきゃダメだよね、って人なら買っても損をしないと思います。でも、同人ショップで2500円っていうのはちょっと抵抗あるかも。
 あと、ソース丸見えなのでお勉強するにはいいかもしれません。
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