駆ける想い

■とんでるマジック
■Adobe Flash
■デジタルノベル
■全年齢
■500円
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                                 (2009.12.09)
▼あらすじ
 生徒会長なんて、生徒からも教師からも都合の良い雑用係ではあるが、これで内申書がアップするなら安いものだ。
 そんな風に考えていたが、文化祭開催間際に起きたトラブルですべてご破算になってしまった。生徒会長のリコールという前代未聞の事態が起きたからだ。何か失態を起こしたのならともかく、単なる八つ当たりで見事にその座から滑り終えてしまった僕は、教師の無神経な一言を聞いたことも相まって非常に不機嫌な気持ちを抱えて帰宅の徒についていた。
 そんな僕の前に一人の少女が現れる。その少女は信じられないことを口にしたのだ。
「私は時を駆ける少女! どお? もう一度過去に戻って、生徒会長をやり直してみない?」と。
▼概要・システム
 リコールを受けて解任された元生徒会長が、過去に戻ってやり直すジュブナイルノベル。タイムリープものです。
 システムはAdobe Flashで、WindowsでもMacでもハードを問わずプレイすることが可能。
基本的なシステムは紙の小説とほぼ同じで、右開きの文章縦組み。右開きのノベルなのですが、右ページをクリックするとページが戻り、左ページをクリックするとページが進むという、個人的には逆じゃないの? という操作方法になっている。これについてはプレイヤーそれぞれで意見が分かれると思うが、フライトシミュレーターで「↑」を押すと機首が下がるか上がるかぐらいの差。慣れれば特に問題はないが、違和感はあります。オプション的なものはありませんが、フラッシュプレイヤーまたはブラウザの大きさによって、プレイ画面? が拡大縮小する。「栞をはさむ」でセーブ、「栞の頁を開く」がロードと同等の機能になっている。セーブできるのは一カ所のみで、常に上書きされるのでご注意。
▼シナリオ・テキスト
 内申書のために生徒会長に立候補したものの、ある件で生徒からの突き上げを喰らってリコールされてしまった主人公。そこへ現れた過去に戻れる力を持つ少女が現れて……というストーリー。伝奇じゃないので「どうして過去に戻れるか」なんていうのは野暮です。過去の過ちをやり直す、というネタはありがちではありますが、ただ成功させて終わるわけじゃないところが珍しい。過去をやり直すということを繰り返し、成長していく物語は、まさしく正統なジュブナイル小説だと思います。
 テキストはさくさく読めるのですが、これは上手さというよりは全体的な文字数が少ないから読み進めやすい、という感じがします。ページ数は200とかなりのものですが、1ページ辺り最大25x12(300文字)。改行その他で結構スカスカなので、新書版のように1ページを上下に分ける仕様にすると実質的に1/4以下、50ページ行くか行かないかぐらいのボリュームだと思います。普通に読んでいれば、20分かからずに読み終えられるのではないでようか。なお、目次から各章タイトルをクリックすると、その章の頭に飛ぶことができます。
▼イラスト・グラフィック
 イラストは各章の頭に登場キャラクターが1点ずつ、本文中にメインヒロインの口絵が3点ほど。あとはパッケージの表紙と裏表紙、ゲームの表紙の1点。絵柄に関してはまったく問題ないんですが、基本的にただ立っている絵なので、本文を読んでいたとしても印象があまりない。というか、無くてもあんまり問題なかったりする。
▼サウンド・SE
 なし。なしなし。なしなしなし。
▼総評
 このソフトのレビューを載せるかどうかちょっと迷いました。
デキの良し悪しではなく、これはゲームじゃないからどうしたものかなぁ、というのが正直なところです。とはいえ、PC(WindowsもMacもこれでひとまとめにしてあると思って下さい)上で遊べ、さらに「栞をはさむ(セーブ)/栞のページを開く(ロード)」という機能があるので、まあいいかという結論に至った。でも、厳密にいうとゲームじゃないんで、そこのところを忘れないで下さい!

 以上のことを踏まえた上で言うならば、小説としてみれば、良質のジュブナイルノベルだと思う。ボリュームが少なめであることを承知した上で摘んでみるのもいいだろう。
 しかし、個人的にはイマイチお勧めしづらい点がある。それは、このゲーム(小説)はPC上でしか遊ぶ(読む)ことができないからだ。最初から最後まで全部やった後に思ったのは、面白いなどといった「作品の感想」ではなく、「この作品をPC上で遊ぶように作った意味はどこにあるんだろう」ということだった。遊んでみるとわかるのだが、セーブ/ロード以外は紙媒体の小説となんら変わらない。それどころか、ランダムアクセス性のなさと「PC上でしか読めない」というデメリットの方が大きいようにも感じられてしまう。
 いわゆるノベル(ビジュアルノベル)などは、テキスト(ストーリー)をより楽しんでもらう演出の意味を兼ねてビジュアル(CGとか)やサウンドを用いており、これは決して紙の小説ではできないことだ。しかし、このソフトは正直に言えば、PC上でも本にしても面白さもまったく変わらないものだと思う。そこをあえてPCで動くソフトとした、何らかの思惑が見えればまた違った感想だったと思うのですが、そういうところが見えなかったのが残念です。
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