夜鬼夜行 | ||
■ヒムガシズ ■吉里吉里2 ■サウンドノベル ■全年齢 ■無料配布 ■http://hina.lolipop.jp/ (2010.10.19) |
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▼あらすじ | ||
10年前、幼馴染みの少女が亡くなった。一家心中とのことだった。 だが、その翌日、少女は少年の前に姿を現した。 少女の姿をした、少女ではない何者かがそこに身を潜ませて。 人ではない、何かを身に棲み着かせて。 あれから10年。 平穏な日々を送っていた少年と少女だが、たびたび不可思議な事件と遭遇する。 それは細い糸を辿ると決めたふたりにとって、願ってもないことだった。 |
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▼概要・システム | ||
この世ならざる者の死の間際を疑似体験できる力を持った少年と、人ならざる者を身に棲み着かせた少女のふたりが主人公の短編の伝奇サウンドノベル。 使用しているシステムは吉里吉里2。ツールバーのメニューはデフォルトのシステムと画面切り替えのみ。ゲームのメニューは「続き」「開始」「設定」「終了」の4つ。「設定」の内容もツールバーのメニューにメッセージスピードなどを加えた程度で、必要最低限のものとなっている。セーブ/ロードは10個まで。タイトルメニューの「続き」やゲーム中のシステムメニューでセーブ/ロードを行なうことができる。 ゲームのシステムそれほどいじられていないが、画面構成は大きくカスタマイズされている。通常画面の上下は大きく切られ、いわゆるシネスコサイズとなっている。切りつめた下の部分にテキストが表示されるが、アドベンチャーゲームのように枠はない。右クリックでテキストとシステムメニューを切り替えることができる。 文字の表示法はアドベンチャーに近いが、それ以外に表示されるのは背景だけなので、上記のジャンルではとりあえずサウンドノベルとしてみた。厳密に定義するとサウンドアドベンチャーってことになるのかもしれないが、それだとドラマCDの亜流っぽくみえるので難しいところだ。なお、プレイ中に選択肢は出現せず、単に読むだけといういみでは純粋なノベルに近い。 バグというほどのものではないが、プレイ中にセーブ/ロード画面に切り替えると、セーブ/ロードを実行した/しないに関わらず曲がリセットされ、最初から流れるようになる。 |
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▼シナリオ・テキスト | ||
人か人でないかはともかくとして、特殊な力を持った少年と少女が、街で起こる怪異……かどうか分からないようなものに自ら関わっていくという伝奇もの。プレイ時間は30分ほど。 よくある巻き込まれ型とはちょっと違うのがポイントかも。少年は巻き込まれ型の主人公と同じような目にあい、少女の方はミステリものの主人公のようにちょっと達観気味である程度裏を知った上で少年を動かす、という役割を分担しているような構成になっている。だが、メインの視点が少年であるため、プレイヤーはそちら側からしか話を見ることができない。少女は知らないところで真実を探っていて美味しいところを持っていく(持っていきかける)という役割っぽい。そういったふたりの関係性に抵抗がないなら、楽しめるだろう。 テキストについてはそれほど問題ないとは思うが、短編のわりに誤字(誤変換)が多いような気がする。ただ、誰かさんの影響……というには時が経ちすぎているのでひとつの形式として定着しているというべきなのかもしれないが、ミスディレクションをさせようかな、というところが透けて見えるので、それが許容できるかが楽しめるかどうかの分かれ目ではないかと思う。 |
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▼イラスト・グラフィック | ||
キャラクターは一切表示されないので、ここで扱うのは背景だけとなる。背景はすべてエフェクトがかけられている。 | ||
▼サウンド・SE | ||
作品の、というか主人公たちの印象に比べて、ちょっと荘厳さがありすぎるような曲が多く採用されているような感じをうける。曲そのもののデキが悪いわけではないが、なんか大仰すぎるような感じ。SEは雨の音や車のブレーキ音など、いくつかの場所で使われている。これらのものは、無料素材を使っているようです。 | ||
▼総評 | ||
無料で遊べる短編としては特に問題なく楽しめるのではないかと思う。 もっとも、純粋な読み物、ノベル的なものなので、ゲームを楽しみたいと思っている人は注意。また、小説ならばあまり気にならないのだが、ノベル・アドベンチャーゲームの形態を取っているためか、誰が話しているのか分かりづらいのが少し気になった。もっとも、ミスディレクションを誘っているので、意図的なことかなとも思うが。 もうしばらく続く短編シリーズらしく、今作は冒頭というか主人公たちの紹介という意図があるのだと思う。それ自体は問題なく達成されたとは思うが、その先の物語まで見たくなるかというと、個人的にはそこまで興味は続いていない。つまらないわけではないが、自分の中に何も残らなかったという感じが近い。フォーマット的すぎてありがちな物語、というほどではないとは思うが、印象に残らなかったというのが正直なところだ。 今作は無料配布で、現在はサイトでダウンロードすることができる。フリー作品とのことなので、自由にプレイすることが可能だ。今後シリーズものとして発表していくらしいが、別作を挟むことになるだろうからしていつになるかは不明っぽい。次作以降は当分先になるかもしれないとはいえ、個人的には発表されたものを積極的にプレイするかどうか結構怪しい。イベント会場で安く頒布されてれば手に取るかもしれない。 そういえば、主人公の少年の「この世ならざる者の死の間際を疑似体験できる力」なんだが、発動条件がイマイチわからない。作中では幽霊(自縛霊? 浮遊霊?)に触れて発動してるんだけど、過去の記憶だと死に瀕した、もしくは死亡直後の祖父に触れて発動している。死んでいればなんでもいいなら別だけど、もうちょっと分かりやすい条件にしないと、ご都合主義と取られるかも。まぁそんな細かいところにケチ付けるのは自分ぐらいなもんだと思うが(苦笑)。 |
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