■玉露飯
■吉里吉里2/KAG3
■小学生恋愛伝奇アドベンチャー
■18禁
■300円
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                                (2004.01.28)


二十四季 −穀雨−(前編)

▼総評
 世間的にはなかなか評判がよいようでしたが、「18禁」で「小学生」ってのが引っ
かかっていて、あまり積極的に手を付ける気はありませんでした。いやだってロリ
は好きじゃないし。ですが、コミケで普通に買えてしまったので、この機会に遊ん
で見た次第です。CDの中は『二十四季 パイロット版』『二十四季-穀雨-』が入っ
てまして、『パイロット版』は2003年5月にHPで配布されたものです。『二十四季
-穀雨-』は後編で紹介します。ちなみに今回の総評は少し逃げ入ってます。力不
足のあらわれですね。

 長い前置きはさておき、感想を述べますと「完成度も高く、なかなか面白いがち
ょっとずるい気がする作品」です。なにがどう「ずるい」かといえば、プレイヤー個々
の持つ「ノスタルジックな思い出」が評価に大きな影響を与えている気がするから
です。私だけかもしれませんが、作品の雰囲気の一部分を自身の中で演出して、
それを含めて「いいゲームだ!」と錯覚混じりに感じている気がするのです。
 作品自体かなり良くできていますし、なによりシステムを含めた「これが『二十四
季』だ」という強い個性を持った世界観とプロダクトデザインは、現時点でも高い完
成度を誇っていると思います。ここまで作品に対する統一感を持つ同人ソフトは、
見回してもそうありません。それだけに、なんというか、最後まで騙されていたか
ったという感じでした(どちらかといえば、勝手に途中下車したようなものですが)。
 正直、小学生が主人公という点、そしてノスタルジックな部分を排除すると、絶
賛されるほどではないと思います。ごく普通ではありますが、その普通なりに心地
よく楽しめるといった感じです。とはいえ、全体を通してシナリオが一新されるとの
ことなので、だいたいの方向性ぐらいに考えておいた方がいいかもしれません。ま
た、世界のイメージは円錐だと書きましたが、主人公の過去と現在を繋ぐ線が見
えてませんので、スタート地点と対極に位置するシナリオがどこかに配置されるん
じゃないかなと思ってます。

 主人公や攻略対象となる女の子がすべて小学生(現代の部分はとりあえずおい
ときます)だから、という理由で避けているのなら一度は触ってみるべきだと思う。
ただ、小学生同士のエッチシーンは(ほぼ)避けられない事態なので、その辺に折
り合いが付けられないのなら回避確定。個人的には完成版を期待したい作品です
が、他人に勧めるには、かなり気をつかう一本です。いっそのこと、全年齢にして
もらいたいなとも思いますが。


一応、後編に続きます


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▼サウンド
 BGMはなし。ですが、SEがそれを十分補っています。使われているSEは、効果
音というより様々なタイプの人々のざわめきで、それをループさせています。駅や
人混みの中で録音してきた、ある意味自然のSE。これらは教室や町中、運動会
など、状況によって使い分けられている。欠点としてはループしてるが故に同じも
の(声のようなものが録音されているものもある)を何度も何度も聞くはめになるこ
とでしょうか。その他に普通のSEやうなり声なども入ってます。将来的には、ちゃ
んとBGMも入るらしいです。
▼グラフィック
 キャラクターやグラフィック周りは全然問題ないと思います。表情の差分もそれぞ
れ結構あります。もちろんというか、女の子の方が若干豊富ですかね。丸っこすぎ
るかもしれませんが、小学生なのであんなもんじゃないのかと。じっくり小学生見
ることなんてないので、分かりませんよ。ええ。立ちグラフィックがあるのは、HPで
紹介されているメインキャラクターのうち上から5人。それ以外は登場しないか、シ
ルエットのみです。イベントグラフィックも問題ないと思うが数が少ない。現時点で、
七宮ルートをクリアするには20前後のシナリオを消化することになるが、その間に
あるイベントグラフィックは9枚。エッチシーンに2枚がデフォルトのようなので、グラ
フィックのあるシナリオはかなり少ない。20前後分のシナリオがが通しならば気に
ならなかったかもしれないが、ひとつひとつ消化していくタイプなので、感覚的に
「足りない」と思ってしまう。エッチなグラフィックは、まぁエッチなのだろうが、やは
り「小学生」というのが、越えられず萌えられない壁。エロ度で言えば「リカヴィネ」
「リカヴィネ魔改造」レベルなので、かなり人を選びます。背景は実写にエフェクト。
エフェクトのかかり具合がかなり強烈で、ものすごくぼやけている。あまりにもぼや
かしすぎじゃないかと思える。もうちょっと弱めてもいいんじゃないでしょうか。ラスト
近くで見られる雪が降るエフェクトは、画面効果としてはいい感じなのですが「吹雪
いている」という感じではないので、もうちょっと大量の雪を斜めから早く降らせたり
した方がいいかもしれません。
▼シナリオ・テキスト
 シナリオはメインキャラクターのひとり、七宮翼のみ攻略が可能になっています。
冒頭およびその周囲のシナリオは入っていますが、未実装のシナリオも多々あり
ます。七宮さんシナリオは最後まで攻略することは可能ですが、掲示板を見た感
じだとプロットからなにから新規でやり直すようです。
 舞台となるのは、主人公が小学六年生の時にすごした街や小学校。時間軸で
いえば、主人公が二十歳である現在世界とリーディングで読みとる過去の小学生
時代。シナリオの基本路線は、サークル発表では「恋愛伝奇」ですが、ジュブナイ
ルといっても外れてないと思います。
 伝奇といってもあまり濃いものではありません。理詰めとか燃えよりは、無力な
りに精一杯の抵抗する、といった感じかな。
それなりに陰鬱っぽく、怪しい人は出
てきますけどね。あっさりとは少し違いますが、おまじないや都市伝説、地域に根
ざした伝奇譚などをベースにした、しっとりかつジメっとしたものです。キーワードを
あげるなら、「無邪気さ」と「正体不明の分からないものに対する恐怖」かな。
 恋愛と日常部分は悪くないと思う。これはシナリオの勝利というより、プレイヤー
個人の記憶の部分が強いと思います。「うんこー」「ちんこー」とか連呼していたあ
の頃、口げんかで自然に「おまえのかーちゃん、でーべーそー」とか出てきてたあ
の頃の雰囲気です。テキストでも。恋愛部分についても、あまり奇をてらったもの
ではないです。ただ、最後のみ、少し懸念材料があります。というのも、冒頭の状
況から推測すると、どのヒロインをクリアしても小学校時代のラストはすべて同じ状
況になるのではないか、と考えられるからです。完成しない限りなんともいえませ
んが、そうしないとお話が始まらない気がするので、どうなるか見物です。ちょっと
だけ『センチメンタルグラフティ』を彷彿させます。

 テキストは問題なく読んでいられます。レイアウトのお陰かキャラクターとの被り
があまりなく、かなり読みやすいです。時折、いくら小学生でもこの言葉は使わな
いだろう? という部分がありましたので、そこを簡単な言葉に代えて欲しいです。
主人公が二十歳の青年とはいえ、「小学生の頃の記憶」を読んでいる以上、難し
い漢字を使う(漢字で喋る)のは違うと思いますから。

 エロに関しては何とも微妙です。大前提として「小学生同士のエロ」というのがあ
りますので、まずここで引っかかるかもしれません。サンプルとなるのが七宮ルー
トだけですが、いわゆる「お医者さんごっこ」的なものが数回、最後直前に本番が
1回あります。「お医者さんごっこ」的エッチは、エロゲーに例えるなら『感覚の鋭い
牙』の主人公と姉ちゃんの序盤に近い感じ。最後の本番は、小学6年生のくせに
知識豊富じゃねーの? という主人公にだいぶ違和感アリアリですが、昨今コンビ
ニでエロ本読んでる小学生が居るからいいか、と投げ気味な感想に止めます。
▼概要・システム
海が見たい。
なんとなくそう思い立った僕は、電車に乗り込む。
揺られる電車に誘われて、いつしか夢の世界に紛れ込んでいた。

朱く、どこまでも朱く染まった世界。
そこにいるのは、僕と、顔すらも思い出せない「君」。
「大人になったら、また会おう」
幼い頃に誓った、二人だけの大切な約束。

生来持っている「能力」のせいで、昔の記憶は抜け落ちてしまっている。
それでもおぼろげに残り、繰り返し夢に見るシチュエーション。
懐かしさ、切なさ、愛しさとが入り混じり、心を締め付ける。
覚えているんだ。記憶じゃなく心が。とても大切な「約束」だったことを。
でも、思い出せないのだから仕方がない。気分を変えようと周りを見回す。
春の日差しと絶妙な揺れ具合で船を漕ぐ兄妹。編み物をするお婆さん。
そして、「君」を見つけた。予想外のことに心臓が早鐘を打つ。
もう一度、もう一度姿を確認しようと人をかき分けて車内を進み、
ホームへ転がり出て改札をすり抜けるが、そこに「君」はいなかった。

幻を見て電車を飛び出すなんて、バカなことしたもんだ。
自己嫌悪に陥つつ、ここはどこだろうと周囲を見回す。
知らないところもあるが、どこか薄れゆく記憶と一致する街並み。
……そうだ。ここは、かけがえのないあの一年をすごした大槻町だ。
無性に胸が高鳴る。あの「約束の夢」は、ここなんじゃないかって。
いつしか足は、あの小学校へ向けて動いていた――――。


 かつて通った小学校や街を巡りながら、リーディング(サイコメトリー能力)を使っ
て失われかけた記憶を拾い上げ、おぼろげに覚えている「約束」を追い求めていく
小学生で恋愛で伝奇なビジュアルノベル。とはいえ、伝奇部分は結構薄目です。
現時点では、主人公の能力と民間伝承におまじない程度。もしかしたら、ちょこっ
と転生ものが混じるかもしれません。

 システムは吉里吉里2を使用。システムメニューやセーブ/ロード画面を始め、か
なりカスタマイズされている。基本的にはビジュアルノベルだが、テキストとグラフ
ィックに随分を気を遣ったレイアウトがとられている。通常時でもテキストはほぼ画
面半分まで。主人公と一対一で話す時は、キャラクターが左右にスライドし、空い
たスペースにテキストが表示される。普通のビジュアルノベルに比べ、「文字を読
みやすく、グラフィックはもっと見やすく」に重点をおいているようです。また、時系
列を表すために、現在では背景がウィンドウ内いっぱいに、過去は背景の上下が
カットされています。セーブ数は100もあるので、多い日も安心です。ただ、キャプ
チャー機能付きなので、ちょっと容量を食うかもしれません。
 ゲームのシステムもちょっと変わっています。スタートシナリオを中心として、そ
の周囲に各シナリオが点在しているのです。ある程度の時間軸と方向性ともなっ
た、任意に選択可能なオムニバス、とでも言えばいいのでしょうか。シナリオ世界
のイメージは底面が広い円錐かな。頂点をスタートとしてなだらかに下っていく感
じ。次のシナリオへは、プレイしたシナリオに隣接しているシナリオの中から1つを
選択して読み進めていきます(戻ることはできない)。シナリオおよびルートはビジ
ュアルマップで見ることができるため、目指すルートは一目瞭然。とはいえ消化し
たシナリオによりルートが変化することもある(電車のポイント切り替えのよう)ので、
必ずたどり着けるとは限らない。その代わりなのか、シナリオ中には選択肢が存
在しません。過去に一度プレイしたシナリオは、あらすじだけを表示して先に進め
るのは嬉しい(システムを変更すれば、普通に読むこともできます)。

ヘックスのようなのがシナリオ。各シナリオ
は、こんな感じで線で繋がっています。
キャラクターと被る割合が減ることになるた
め、とても読みやすい。
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