▼概要・システム
A.D.1999 July
世界に一つの転機が訪れた。
フランスの片田舎、セルランの修道院で起きた凄惨な事件。
それは人の手によってもたらされたものではなく、後に「レギオン」と呼称される悪
魔憑きの仕業だった。この日を境に全世界で同様の事件が頻発するようになる。
警察や軍隊が出動するものの、レギオンは彼らの手に余る存在だった。
やがてこの状況を憂慮した中央法王庁が、ある発表を執り行なう。
それは、長らく隠蔽していた機関の存在。
中世において、魔女狩りに奔走し、聖職者の権威と欲望のために大きく貢献したキ
リスト教の汚点のひとつ。異端審問所。
悪魔を祓い、打ち倒し、壊し殺す悪魔祓い師の集団。
忌まわれながらも成果を積み重ねていった彼らは、その存在を認められてゆく。

一人の悪魔祓い師が、ドイツの教会から足を踏み出した。
新たなる赴任地は、父の没した極東の地。
教父の止める声に応えることなく、ただ無言で歩を進める。
手にした大きなトランクと、縫いつけられた左目に封じ込められしモノと共に――。


 悪魔に憑かれている隻眼のエクソシストが主人公の伝奇ものビジュアルノベル。
今回のレビューは若干イレギュラーな感じで、シナリオ部分などに関しては冬コミ
で購入した体験版Ver1.02、グラフィック面やシステム面はレヴォ35で頒布されたも
のとほぼ同等といわれているWeb体験版Ver2.00を元にしています。全13シナリオ
中、Ver1.02には3話、Ver2.00には1話の終盤手前までが収録されてます。

 システム面は、おそらくオリジナルで組んでいると思う。だが、未完成の部分が
多くて使いにくい。一番痛いのは、終了できないこと。タイトル画面の「終了」を選ぶ
とサークルロゴ→タイトル画面とループする言語道断ぶり。しかも、一度フルスクリ
ーンにすると元に戻せないので、無理矢理強制終了させるしか終わらせる方法が
なかったりします。またにフルスクリーンでプレイしていると、時折フリーズします。
Ver1.03でもVer2.00でも上記のようなことは起こります。その改善のためか、
Ver2.00では右クリックによるシステムメニューが豊富になっています。ですが、セ
ーブ・ロード以外は実装されてないので、あまり意味はなかったりします。
いや、「文字を消す」とか一応実装されてるものもあるんですが、本当に文字が消
えるだけで、半透明の黒い文字を読みやすくするためのバックが消えなかったり
するんですよ。困ったモノです。あと、動作がかなりもっさりしてます。
これがVer2.00のシステムメニュー。ゲーム
にも度々登場するセフィロトの樹がモチーフ
かな。でも、まだ使い物になりません。
テキストの表示はこんな感じ。ルビがある
ので、ほとんどの漢字は問題ないと思う。と
はいえ、一部悩むところはありますが。
▼総評
 全体的に見て未完成なソフト。体験版だからあたりまえかもしれませんが。
 まずシステム面ですが、足りないところが多すぎです。ウィンドウモードで遊ぶ分
にはさほど問題はないのですが、フルスクリーンモードだと不便さが浮き出てくる。
Ver2.00では改善されるシステムの輪郭だけは見えても、ほとんどが未実装なの
で結局不便なままだったりします。システムはオリジナルで組んでいるようなので
大変なのかも知れませんが、最低限のプレイアビリティは早急に確保してもらいた
いところです。個人的には、ウィンドウ/フルスクリーンの切り替えや文字表示スピ
ードの変更、そしてちゃんと終了できるようにするのがが急務だと思います(笑)。

 シナリオは、オリジナル色の薄い伝奇(オカルト系での元ネタの世間的認知度が
高い、という意味)ものなので、好きな人には比較的安心できそうなシロモノになり
そう。個人的には『デビルマン(当然、漫画版)』な香りが良くも悪くもといった感じ
がします。主人公の兄貴は、飛鳥みたいな役回りしそうですしね。


 現時点で3話まで完成しつつも、1話から作り直してるっぽいので、完成するのは
かなり先の話になりそうです。今年中の完成はありえないんじゃないかって思える
ほどです。来年中に完成すれば御の字のような気がします。オカルト系ごった煮伝
奇アクションが好きで、完成まで長い目で見てつつ待っていられるなら、追っかける
には最適の一本ではないでしょうか。
▼サウンド
 音楽周りは、たぶんあんまり問題ないと思われます。それほど印象にないという
のが正直なところですが、イヤな気分にさせられるようなところは特にありませんで
したのでそんなものかと。Ver1.01に比べてVer2.00は、ちょっとクォリティが上がっ
てる気がします。SEはちょっと迫力がありません。落雷のSEはそうでもないのです
が、それ以外のものが物足りない感じ。。それとSEの演出部分に関してですが、
SEと同じ擬音がテキスト表記されるのは違うような気がします。
▼グラフィック
 キャラクター関連の原画はそんなに悪いとは思いませんが、塗りのせいかボヤけ
てしまっている印象があります。キャラクターの輪郭がスミでないためかどうかわか
りませんが、イマイチはっきりしません。塗りそのもののレベルもそう高いわけでは
ないですが、Ver1.01からVer2.00で向上がみられるのは好感度高し。立ちグラフィ
ックは、各キャラそれぞれある程度の枚数はあるようで、結構表情が変わります。
また、表示方法として遠近の2パターンがあり、主人公とキャラクターの距離感を演
出しています。画面上に表示されるのは、現時点で最大3人まで。イベントグラフィ
ックは少な目なご様子で、1話中に3枚ほど。物足りない気はします。背景は
Ver1.01はほぼ実写にエフェクト、Ver2.00はモデリングによる3DCG(一部実写)。
そのため、二つを見比べるとだいぶ印象が違います。個人的には、統一が取れて
いるという意味でも実写の方が好みかな。モデリングの背景の出来はそれほどよく
ないし、テカテカしすぎな感じがしますし。イベントグラフィックの背景は、普通の
CGです。モデリングされたものではありません。あしからず。
▼シナリオ・テキスト
 シナリオは、もうオカルト臭バリバリの伝奇ものです。世界観は色々説明しなけれ
ばならないのでちょっと面倒。まず、主な勢力・対立関係は、現代的な雰囲気の中
で『真・女神転生2』のような虐げられた古の神々vs唯一なる我らが尊き神(の僕=
主人公たち)との争いといった構図。たぶん、全13話ってのも話の都合の前に、聖
書的なところから先に決めたんでしょうね。そのためか、設定のベースとなるのはキ
リスト教(というか聖書)で、あとはもうごった煮状態。古代史にでてきそうなフェニキ
ア系を始めとした周辺地域の神様やら、カバラ(数秘術の意味合いが強い)、陰陽
寮なんかも登場し、出てないのは神道ぐらい(学園の名前からして時間の問題だと
思う)。また、特徴的なのがこの世界の魔術で、おそらく「数学で解析された技術」
とされているっぽい(陰陽道はまた別系統)。まぁ、観測・予測的な部分でしかまだ
出てきてないんで、実践向けかどうかはわからないけど、たぶん物語のカギの一つ
になると思う。究極的に突き詰めていけば、魔術は物理学で理解・実践できるとい
うのは、ネタとしては珍しくありまsねんしね。でもって、主人公は隻眼で二挺拳銃
なエクソシストでデビルマンだと思ってもらえれば、それほど外れてないと思う。そ
れでもって、物語の裏っ側に『エヴァンゲリオン』に出てくる人類補完計画の爺さん
? みたいな人たちがいて、主人公の覚醒なんかを画策しながら待っているとか、
いった部分も感じられ、ある意味お約束な展開も見られそうです。

 ストーリーの大きな流れは、全13話に渡って悪魔祓うのにドンパチするアクション
ものだと思われます。祓いながら自分の秘密を知ったり、周りの陰謀を知ったり、近
くにいる女の子と仲良くなったりするのでしょう。ただアクションとはいっても、あまり
プレイヤーの意志が介在できるものではなく、ドンパチを見てる部分の方が多いで
す。現時点で、選択肢もほとんどありません。1話はだいたい、一時間ぐらいでしょ
うかね。各話の終わりにエンディングが付くらしいです。『吸血殲鬼ヴェドゴニア(18
禁ゲーム)』みたいなもんかと(個人的にはデビルマンのエンディングですが)。
 Ver1.01とVer2.00の第1話は、若干ストーリー部分が変わってたりします。おそら
く、Ver2.00の方を正式なものとして、Ver1.01に収録されている2,3話も相応に変
わっていくのだと思います。個人的には旧1話の方がしっくりきますけどね。羽交い
締めにされて肋骨が折れるというのはどうかと思いますけど(折れるモノなの?)。

 テキストの方は、ちょいと退屈だが我慢できないほどじゃないです。全体的に難し
めの漢字を使っている部分が多いのですが、きちんとルビを振ってあるのであまり
問題ありません。それでも「略同じ」「能く」「然程」な日常的に使われる言葉も漢字
になっており、読み手からすればちょっとこれはどうかと思う点もあります。旧仮名
遣いなどが使われた古い時代の伝奇ものを狙っているのかもしれません。それと教
会関連(異端審問所関連の組織などオリジナルの部分)の用語は、ほとんどがドイ
ツ語でのルビになってます。おそらく、趣味と演出を兼ねているのでしょう。
 また、最初だけかもしれませんが、描写がなく場面転換していることもあるので、
プレイヤー現状把握できないのはあまり頂けないと思う(主人公がどこかのドイツの
教会からゲームの舞台となる地へ召還されるのですが、その地に着いてもどこの
国、どこの地域だかわからないのは問題かと)。

 一応18禁ですが、そういった部分は皆無に等しいので、現時点でそっち方面の判
断はムリです。Ver1.01にはちょっとだけそういうシーンはありましたが、全然エッチ
じゃないことだけ明記しておきます。お色気シーン程度かな?


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■月臥丘書寮
■システム不明(オリジナルシステム?)
■ビジュアルノベル
■18禁
■0円
http://www.tsukigaokashoryo.com/
                                (2003.01.28)


八月の殉教地 体験版

Ver1.02 & Ver2.00

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