契剣・体験版

■彩頃望磨
■吉里吉里2/KAG3
■ビジュアルノベル
■全年齢
■100円
http://saikolo.com/

                                 (2007.04.18)
▼あらすじ
父親を殺した少女は、これからのことを考えながら雨降る路地を歩む。
あてもなく、金もなく、目的も感情すらもなきまま街を彷徨う少女。
何も持たない少女であったが、身に受ける雨にもたらされた寒さには抵抗しがたく、
雨をしのごうと路地裏にあった浮浪者のビニル小屋へと足を進めていく。
そこで少女は、血の海の中に転がる無数の人の頭と、そして雨に濡れながら人を殺す青年と出会う。

食人鬼。カニバルと呼ばれる彼らは、人を殺すことを厭うことはない。
世間において異端な彼らを、彼らと端を同じくする「異端」な一族が狩り続けていた。
人知れず闇から闇へと食人鬼を狩る異端の青年は、ある夜、狩りの現場で一人の少女と出会う。

ずぶ濡れの少女は青年に願い、乞う。
「私の全てをあげるから――私の過去を殺してください」
▼概要・システム
 食人衝動を抑えられない殺人鬼を狩る異端の殺人鬼と、自らを殺して欲しいと言う父親殺しの少女が織りなす伝奇っぽい殺人忌憚。あ、読みは「ちぎる けん」とのことです。……こう書くと、誰かの名前みたいだ。

 使用システムは吉里吉里2。基本的な部分は実装されています。右クリックの機能は、メッセージ消去。……吉里吉里2って、左クリックしながら右クリックするとスキップになるんですね。今まで知らなかったぜ……orz
 ゲームのシステムは、ビジュアルノベル。基本的には、ウィンドウ上部のメニューでの設定で動きますが、一部演出的な部分でテキストが自動送りになることがあります。また、ゲームを再起動させた場合、また自動送りの冒頭のポエムを見なければならないのは、どうにかして欲しい。できれば、一度フラグが立ったらクリックで飛ばせるようにしてくれると助かります。あと、ここのルビが非常に読みづらいので、もうちょっと文字が大きくてもいいような気がします。
▼シナリオ・テキスト
 シナリオは、ヒロインの少女と主人公の青年とが出会うところまで。プレイを終えると、プロローグ的なデモを見ることができます。正味、15分ぐらい。ダークで殺伐とした雰囲気のゲームかなということぐらいは感じ取れますが、それ以上に分かることはないと思います。サークルサイトへいくとキャラクターのプロフィールなどを知ることができますが、体験版本編では何も分かりません。デモでは、この後の大まかな物語の流れっぽいものや、主人公を始めとしたキャラクターのプロフィールを垣間見ることができます。「垣間見る」とはいっても、いまや懐かしの(リメイク? 再編集? される)「エヴァンゲリオン」で流行った黒地に謎めているっぽい文字・言葉を大小つけて羅列したり配置したりするような画面や、キャラクターに被せて本編で使われるであろうテキストを表示していたりするので、あまりプレイ後に作品を理解する助けにはならないと思います。まぁ、「ああ、こういうのが好きでやりたいのね」というのが分かるという意味では収穫かもしれません。
 テキストは、読みづらいというか形容しがたい変な気分になる文という感じでしょうか。惜しみない体言止めの連発と、イメージ優先で書かれている比喩の連続のお陰でひどく読みづらい。カッコイイ言葉や表現を、表現したい描写に合わせて組み合わせてるって感じですかね。カッコイイクールなテキストでも目指しているのかもしれませんが、やりすぎは毒だと思いますし、実際、本編でそれが機能しているかはかなり怪しいです。読みづらい、というよりは理解しづらい(しがたい)、といった感覚の方が近いかも。
▼イラスト・グラフィック
 グラフィックは文句なしに良いです。渋めのキャラクターデザインが、退廃的な雰囲気や背景にマッチしてると思います。といっても、それを見られるのはほとんどがイベントCG。立ちグラフィックは、ほとんどありません。こちらについては、どうなるか不明です。
 背景はCG……と思ったら、3DCGみたいです。こちらのクオリティもかなりのもので、目を見張るほどです。体験版内で見られる背景の数はあまり多くありませんが、その後の「予告編」を見るとそれなりにありそうなので期待していてもいいんじゃないでしょうか。でも、コレを見せられたら、3DCGの背景についてもちょっと評価を変えていく必要があるかもしれません。あれが標準になるとキツそうですが。
 画面のエフェクト関連は、戦闘に武器などの軌跡を表すものと血しぶきという一般的なもの。あと、外の場面では、常に上空から雨が降っているエフェクトが常に掛かっています(イベントCG時にはありません)。
▼サウンド・SE
 曲は5曲かな。1曲だけ、曲としていいかSEとして扱っていいか分からないものもありますけど。曲の傾向は、なんというかノスタルジックな感じがします。CDDAにシフトするちょっと前の時期のPCゲームのような、MIDI音源丸出しのような感じ。戦闘や主人公視点の時に流れる曲は結構良い感じです。
 SEはあります。バトルものにありがちな何かを切ったような音です。武器を振ったSEはあるのですが、切られた音がないのでちょっと寂しいかも(避けられたという描写はない)。サウンドもSEも無料素材を使っているようです。
▼総評
 体験版からではそう多くの情報を得ることはできませんが、普通の伝奇のカテゴリーに当てはまると思います。そういえば、最近似たような漫画を見た覚えがあるんだけどな……『爪と銃弾』だったっけか?
 シナリオの方がどうなるかは置いといて、テキストがかなりキッツいのが不安要素でもあります。もちろん、これがいいとか、これじゃなきゃだめ! って方もおられるとは思いますが、あまり多数派ではないのではないかと思えます。読めなくはないけど、無駄に疲れるって感じですかね。ここいらがどうなるかが、この先のポイントではないかと思います。
 イラスト、グラフィックの方は文句なしなのは異論がないと思いますが、個人的にはむしろサウンドの方に期待が掛かります。むしろ、プレイしているとグラフィックよりもサウンドの方が強く印象付けられます。多少物足りないところがあるのは事実ですが、そこはかとなく懐かしさと無駄に力はいっているような感じのところがお気に入りです。ただ、のっけから飛ばしまくっていて、某ライダーのごとく「最初から最後までクライマックスだぜ!」な錯覚を覚えると同時に「○○先生の次回作にご期待下さい!」なんて言葉が頭をよぎったりしてます。

 シナリオは流れだけで、あとはサウンドとグラフィックに引っ張られているような感じがします。とはいえ、ノベルの本体はシナリオとテキストですから、ここのところはどうにかならないかなぁと思うのが本心。このまますっころぶか真っ直ぐ進むかは、もうちょっと先を見ないと分からないと思います。とりあえずは、今月中にでる予定のWeb体験版待ちってところでしょうね。あのテキストにもう辟易という人は全力スルーが吉だと思います。個人的には何となく期待しつつ10歩ぐらい下がって様子見、といったところでしょうか。まぁ、背景グラフィックだけに引かれているようないないようなところもあるので、何の確信も確証もないのですけど。
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