無形のドルドナ TRIAL VERSION

■第四学区
■NScripter
■伝奇アクションノベル
■18禁
■300円か400円ぐらいだったっけ?
http://www.ten2net.com/d4gk/

                                 (2006.01.07)
▼概要・システム
 ひょんなコトから神のごとき力を持つ仮定生物の主となった主人公が、パートナーとなった仮定生物と一緒に自分を殺してくれる人間を捜し求める伝奇? アクションビジュアルノベル。

 システムはNScripter。基本的な機能は使えるようになっているため、特に過不足はありません。セーブ、ロードは可能(9つまで)です。
▼シナリオ・テキスト
 OHPのストーリー紹介を見ると概要とはまったく違いますが、体験版の内容からは上記のことぐらいしかわかりません。
 この物語の鍵となる「仮定生物」とは膨大な知識と強力な力を備えた生物なのですが、主体性がなく「観測者」と呼ばれる者に姿形を構築(イメージ)して貰わないと形を取ることができずに消滅してしまう儚い存在です。長年この仮定生物と生死を共にし知識と力を蓄えた主たる生命体は、いわゆる「神」のような存在で、お互いの力を奪い合うため狩ったり狩られたりしているらしいです(力の詰まった核みたいなものがあって、それをを自らに取り込むことができるらしい)。その中でも最強クラスの生命体が、「なんかもー疲れちゃったから、(仮定生物を)誰かに譲って楽になろう(意訳)」という気分になり、運悪く彼らの存在を関知した主人公が後を継いでしまったというのが基本設定とプロローグです。

 その主人公なんですが、自殺未遂を起こして入院中で、運良く? 死なずに意識のある植物状態だったりします。そのため、基本的に主人公はベッドの上で寝たままです。視覚や聴覚は仮定生物とリンクしているため状況は把握できるのですが、動けない主人公なんていなくても別にいいんじゃね? という気分になります。バトルシーンにおいても「殺すな」ぐらいしか指示していないし、なにより無敵のねーちゃん(仮定生物)が戦っているところを安全な場所で見ているだけだから疎外感ありまくりです。本編の中盤〜終盤は分かりませんが、序盤は設定を理解すれば理解するほど無力感が増してきます。仮定生物の新たな主となり、自らを殺してくれる人間を捜しながら、街で起こった事件に関わっていくっぽいですが、主人公が寝たきりのままですからどこまで楽しめるかは不明というか不安ですね。どんな行動であれ、自分で行動を起こせないような主人公はイメージとしてマイナスです。
 体験版の終わりにはストーリーに載っている事件に関連した? エッチシーンがあります。やけに塗りに気合いが入っているようなのは別として、それなりにエロいです。ただ、無理に追加しておくようなものでもないかなと思います。

 テキスト自体には特に問題ないとは思いますが、独自設定を説明するためのテキストが多くてちょっとうんざりします。頼むからもうちょっと分かりやすくやってくれという感じですね。
 蛇足ですが、サークル的には「伝奇」となっているジャンルですが、個人的には「ファンタジー」、もしくは「SF」とした方がしっくり来ます。ストーリーに書いてある「神」や「悪魔」は、伝説・伝承的なものではなく、存在・概念的なものに近いような感じですから。
▼イラスト・グラフィック
 キャラクターイラストに関しては文句なしです。OHPのキャラクター紹介にはラフっぽいものしかありませんが、パッケージやゲーム中のイラストはこれとは比べものになりません。世間一般的なキャッチーさで言えば、今回のコミケの中では1,2を争わせても良いぐらいのできではないでしょうか。ただ、立ちキャラクターはほとんどありません。体験版の終盤に数人出てくるぐらいです。それ以外の重要なキャラクターは、カットイングラフィック(「神」と呼ばれるクリーチャー系はすべてこれ)かイベントグラフィックで済まされてしまっているからです。カットインのグラフィックはそこそこの数があり、主にバトルシーンで使われています。イベントグラフィックは3,4点で、その他にバトルシーンで使う攻撃のエフェクトや武器などが画面と同じサイズで描かれています。グラフィック面は基本的に問題ないのですが、塗る人が2人いるためか、少し差がでてしまってます。重要度の低いキャラクター、もしくは体験版の終盤に登場するキャラクターの塗りはちょっとベタ気味で、塗りのランクがちょっと落ちてます。この辺りの統一を図ってもらえたらなと思います。個人的にはラスト近くのチンピラたちが、見た目も口調もいろいろなもののパッチワークっぽくてあまり面白くないなぁ。『特攻の拓』を愛読書とするチンピラたちが、下北沢で女にウイニングザレインボー(影道雷神拳でも可)を喰らって負けたって感じ。背景は実写にエフェクトをかけたものです。
▼サウンド・SE
 サウンド周りはフリー提供のものとお願いして作ってもらってるの2つらしいです。どちらがどちらかかを聞き分ける耳はありませんが、良い感じです。どこかしら『ICO』っぽさを感じるタイトルの曲ととギターが良い感じのチンピラバトル曲が好きかな。他のバトル系の曲も勢いがあって良い感じです。SEは特にバトル関連で豊富に使われてます。特に問題はないと思いますが、衛星レーザーの発射音がビームライフルまんまそうなのが、ちと気にかかりました。
▼総評
 まだ体験版とはいえ、トータルバランスは非常に高いです。まだそれほどチェックしてはいませんが、今回の冬コミで頒布された体験版の中では随一のデキなのではないでしょうか。体験版ということでシナリオ面で不明、不安なな点は多々ありますが、比較的クオリティの高いグラフィックやサウンドは、未来を期待させるに十分といえる。先物買いとして祭り上げるには、十分な力のあるタイトルだと思います。

 というのが客観的な見方なのですが、個人的には2歩ぐらい引いて観察したいというのが正直なトコロだったりします。それというのも、作品全体から『Fate/stay night(TYPE-MOON)』っぽさがにじみ出まくっているからです。設定やストーリーは、『無形のドルドナ』のオリジナルであることには間違いありません。ただ、個々のパーツを見てみると完全には一致しないが、大分被っているように感じられるのです。テキストもそれに通じるところがもあるためか、設定についてつらつら説明を読まなくてはならないところも、そう感じるゆえんのひとつです。「二番煎じ」ではないのは明白なのですが、絶対だな! と問いつめられると「何となく似てるかも」と答えざるをえない微妙さが2歩ぐらい引く理由です。あと、これを「伝奇」と言われちゃうのはちょっと違うんじゃないかなー、というのも理由に付け加えときます。はい。

 バトル系のビジュアルノベルとしては、ポスト(まだ少し早いかな?)『Fate/stay night』的な存在になりうる力はありそうな一本です。今月中旬には体験版がダウンロードできるようになるので、TYPE-MOONファンならば摘んでみるのも一興でしょう。ただ、同じTYPE-MOONのファンでも『Fate/stay night』より『月姫』が好き、と言う人は受け付けないかもしれません。

 余談ですが、この体験版のケースはなかなか面白いギミックのケースでした。こういうのも変わっていていいですね。
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