悲溜の丘 体験版

■とてちてた
■吉里吉里2/KAG3
■幻想恋愛戯曲
■今のところ全年齢
■確か300円
http://www.totetiteta.com/

                                 (2006.01.30)
▼概要・システム
 ある不思議なことが日常となっている田舎の地方都市を舞台にしたジュブナイルアドベンチャー。

 システムは吉里吉里2。コンフィグ的な部分はほぼデフォルトのままで、不便はない。セーブ/ロードも普通にできるが、また、セーブデータを保存するフォルダを見ると、セーブした場所の画面(bmp)が保存されているが、Ver1.01ではbmpはゲーム中のセーブデータには表示されない。今後、開発が進んでいくと「セーブした場面付のセーブ/ロード機能」が実装されると思われます。
▼シナリオ・テキスト
 空から振ってくる硝子玉。大半は触れれば砕けてしまうが、ごくまれに砕けずに残るものがあった。主人公の高野宏明は友人たちとこの地域に伝わる「悲溜の丘」の伝承の謎を解くため、その鍵となる硝子玉を集めて調べていくのだった……というのがメインのストーリー。主人公たちは高校生ということもあり、ファンタジーというよりはジュブナイルに分類した方がしっくりきます。ヒロインの設定に一部「えー」なところはありますが、そこを除けば友人を含めてみな一般人。ストーリーの展開上、ちょっぴり不思議なシーンはあるかもしれないが、突飛すぎる展開はないと思います。
 攻略できそうなヒロインは3人いますが……これ、攻略できるのか? それぞれ攻略可能で物語が分岐すると、ヒロインのストーリーごとに大事な部分を放置したまま終わりそうでちょっと不安です。予備知識無しで遊んでいたときは、一本道の物語だとばかり思ってましたが、この辺りは何とも判断できません。

 テキストは画面下部のメッセージウィンドウに最大3ラインまで表示されます。テキスト自体は、読点が少なく少々読みづらい。また、体験版は1日だけということもあるのだが、場面場面で「いま何時頃なのか」というのが非常にわかりにくい。逐一時間を示せという訳ではないが、もうちょっと展開に合わせて自然にテキストに混ぜ込むようにしてプレイヤーに教えてくれると安心できます。
▼イラスト・グラフィック
 遠目(ウィンドウモード)で見ると悪くはないのですが、近く(フルスクリーン)で見ると粗が目立ちます。とはいえそれほど悪くない方なので、十分許容範囲内です。ただ、もうちょっと仕上げというか細かいところを丁寧に描くと良いんじゃないかと思います。メインとなるキャラクターたちの表情パターンは結構にあり、表情は豊かな方だと思います。ただ、キャラクター関連で1つこれはどうだろうと思ったのが、親友の表示範囲です。背が高いキャラクターなのはわかりますが、頭(性格には髪の毛の部分)が画面上部で切れてしまっているのはあまりよくないんじゃないでしょうか。
 背景はCGです。面白いことに、背景CGに使われてる色は白と藍の2色だけです。イメージとしては、水墨画の墨の色を藍色にしたものと思って頂ければ間違ってないと思います。色の濃淡で背景を描いている表現は他で見たことがなく、非常に新鮮です。作品のシナリオ、そしてイラストなど淡い色合いで統一を目指しているゲームには合っている方法だと思います。しかし、精密に描かれた背景がある思えば、とりあえずその場しのぎでババっと描いた適当な背景もあり、クオリティがバラバラです。体験版とはいえ、もうちょっと背景のクオリティの統一を図って欲しいと思います。なお、イベント系のCGはフルカラーです。キャラクターもフルカラーです。念のため。
▼サウンド・SE
 非常にゆったりとした調子の曲が多く、BGMとしては悪くないと思います。作業中に流しっぱなしにしても「邪魔にならない」ぐらいなので、BGMとしては適しているといっていいでしょう。SEは使われていないようです。また完成の暁にはオープニングにヴォーカル曲が追加されるようです。これについては収録が終わっているようで、、サークルのサイトからダウンロードすることができます(私は聞いてません。これをアップする直前に知ったものですから)。
▼総評
 パッケージイラストや背景などの部分から受ける印象で語るならば、非常に地味な青春時代の一部分を切り取ったような淡いジュブナイルノベル、といったところでしょうか。ファンタジックなところはありそうですが、伝奇っぽい印象はありません。日常部分の描写にはちょっと物足りないところはありますが、超展開のない「比較的」アットホームな田舎の不思議物語が体験できそうな感じです。そういったものに期待するのなら、ウォッチするのもいいと思います。
 その一方で上記のジュブナイルなものとは別に、もう一軸「家族愛(のようなもの)」というのテーマがあるような気がします。この部分にに関しては、ほのぼのとした雰囲気はなく若干鬱ぎみな雰囲気が漂いそうで、掘り下げていった場合はハッピーエンドか、克服または解決できなかったが主人公の成長に至るという話しにもなる可能性が捨てきれません。鬱系の物語が苦手ならば、少し警戒をしておいた方がいいかもしれません。ただ、その鬱部分とあまり関係ない部分で、何の根拠もなく「メインヒロインって人間か?」なんて考えが浮かんだりもするんですよねぇ。なんでだろ。

 それともうひとつ、シナリオと密接に関わる点で懸念があります。それは白と藍で彩られた背景のことです。この背景は他の同人ソフトと一線を画しており(特別秀でているという訳ではありません)、地味だが注目に値する個性だとは思います。ただ現時点の仕様のままいくと、「時間経過を背景で演出できない」という弱点が浮き彫りになるかもしれません。朝、昼、夕方、夜といった時間の経過を、背景の色合いとわずかなテキストで処理できる手法に対し、『悲溜の丘 体験版』ではすべてテキストで行わなければならないため、ある種のハンデを負っている状態といえます。それに加えて体験版の印象では、自分の内面の描写は多い一方、周囲や時間に関わる描写はサラリと流されている傾向があるため、「い、いつのまに!?」と思ってしまうところがありました。これは私の「テキストを適当に読んでいる」のと「状況による時間の推測」で状態を把握しようとしていたのも悪いのですが、その一方でテキストを読んでいながら頭に浮かぶイメージとシーンが重ならないほど説明が不足しているとも言えます。もう少し、描写にも力を入れて欲しいですね。背景については、思いつきでいいなら朝方は朱と藍のグラデーション、昼は藍、夕方は橙、夜は墨と線の色合いを変えてみるとかどうでしょうか。でも、藍一色ってのも悪くないんだよなぁ。

 個人的には積極的に応援、期待をする訳じゃないけど、完全にスルーするって訳でもないという非常に微妙な感じです。モノが目の前にあった場合、その時の気分と頒布料金によってスルーするかどうか決まるって感じですね。
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