KATAKURA パイロット版

■物理準備室前
■吉里吉里2/KAG3
■政治活劇ビジュアルノベル
■18禁
■200〜300円ぐらいだった気がする
http://frontppr.syuriken.jp/

                                 (2006.01.03)
▼概要・システム
 永田町を中心に起こった政治テロから数年、新たな政府の元で活力を取り戻しつつある日本を舞台にした政治活劇ビジュアルノベル。

 使用しているシステムは吉里吉里2/KAG3で、特に過不足はありません。デフォルトと違うところは、「Skip」機能を別枠にして使いやすくしているところでしょうか。ただ、既読、未読の区別はないようです。
 システム面で少し気になる点は2つあります。1つは一画面に表示される文字数が少々多めなところです。文字がそれほど大きくないため、横の文字数と行数が多くなっています。テキストの見せ方にもよるのでしょうが、もう2、3ピクセル数を上げてもいいんじゃないかと思いました。もう1つは、セーブのタイトル画面やシステム画面に表示されるメニューにマウスカーソルを合わせた状態でCtrlを押すと左クリックと同じ機能(決定)を起こしてしまうことです。こちらは大したバグじゃないんですが…………これって吉里吉里2の仕様でしたっけ?
▼シナリオ・テキスト
 世界観が特殊なのでそこの説明から始めることにします。
 まず、この世界には「片倉主義」という思想があります。21世紀初頭に片倉直樹という青年が発表したこの理論は国を超えて拡散し、世界中の財界人や政治家などを始めとする信奉者たちによる互助団体の形成を経て、片倉直樹とその妻を頂点とする企業集団「片倉財閥」を構築するに至る。この片倉財閥は、世界各国の経済や政治に介入するほどの力があり、テロ後の日本の復興にも大きな影響を及ぼしている。
 ゲームの舞台となるのは「片倉主義」が起こってから約50年後の2064年の東京。2056年、日本の政治機構の中心地である永田町、霞ヶ関などでテロ――後にいう京浜政変――が起こり、当時の現職国会議員の大半が殺傷され、国家機関がマヒしてしまう。この時、テロの凶刃から免れた青島経産相は横浜で臨時政府を立ち上げ、テロリストとの戦いに勝利し、正式に内閣総理大臣へ就任することとなる。この時の勝利の決め手となったのは、主人公の姉にして現片倉財閥のトップ、片倉唯率いる部隊での攻撃だったらしい。その後、衆議院議員となった彼女はいま、日本の政権を奪取すべく、表面上は協力関係である青島内閣総理大臣と本格的な政治闘争に入ることとなる。

 だいぶ長くなりましたが、以上がこのゲームのベースとなる拝啓です。これを事前に知っておかないと紹介が分かりにくいので載せておきました。
 主人公は片倉夏樹という青年で近衛警察官(現実でいう皇宮護衛官みたいなものらしい)です。片倉財閥党首・片倉唯の弟ですが、京浜政変を境に彼女とは生き別れており、青島総理大臣に引き取られて生活していたようです。
 ゲームは夏樹が異動により有歌内親王の護衛を命じられるところから始まります。それと前後して起こり始める政治闘争の中、どう行動するかでストーリーが進んでいくものと思われます。重すぎる家の名前と忘れられない姉の存在、そして姉と対立する育ての親、青島総理と兄妹のように育った少女、そして国のために生きることを義務づけられた内親王と、序盤からドロドロとした人間関係を構築させまくりで、ここからどこ血なまぐさい権力闘争をやってくれるのか期待したくなります。
 パイロット版では舞台背景の説明とメインとなるキャラクターたちのお目見え、そしてそれぞれに関わるキャラクター同士を会わせるところで終わります。どうせなら、容赦ないほど徹底的に権力闘争を描ききって欲しいですね。
 ただ、「政治」はともかくとして、どこまで「活劇」になるのかちょっと不安なところもあります。主人公が護衛官だから「活劇」部分もあるようですが、そっち方面はあまり期待しない方がいいのかもしれません(主人公、作中で「あんまり強くないし」発言をしてるので)。個人的には「活劇」なくてもいいです。はい。

 テキストは、少々読みづらい部分があります。誤字はそれほどないのですが、ちょっとくどいというか説明部分が多すぎるというか。特に説明的な部分は結構長いので、少し疲れます。ただ説明するのではなく、たとえば冒頭部分ならテレビ中継っぽいシーンにしてアナウンサーに状況や時代背景を説明させるなどの演出にしていいんじゃないかなと思いました。内閣総理大臣指名なら、テレビで中継しててもおかしくないし、今や政治とメディアは切り離せませんからね。
▼イラスト・グラフィック
 キャラクターデザインや塗りに関しては上々の部類にはいると思います。表情差分もそれなりにあり、見た目には非の打ち所がありません。ただ、表情は変わりますが、ポーズの変更はありません。しかも、どのキャラクターも直立不動ぎみで縦にスラッとしたポーズばかりなので存在感が少し足りない感じです。肩幅を広げろというわけではありませんが、もうちょっと横に広いポーズのバリエーションがあったらどうだろうかと思います。背景は実写にエフェクトをかけたものを使用しています。そのエフェクトですが、ぼかした上に走査線のようなが走っているような感じになっています。個人的にはちょっとウザいので、走査線は外してもらえたら嬉しいですね。基本のぼかしだけでも十分な気がします。なお、シナリオのネタがネタなんで、背景に国会議事堂とか参議院議場とかがありますよ! エフェクトかけてもバレバレですよ!! 
……てゆーかこれ、国会議事堂案内にある写真をトリミングしただけじゃないのか? まぁ、衆議院のHPと違って参議院のHPには著作権について書いてないから大丈夫なのかもなぁ(普通はよくないです(苦笑))。
▼サウンド・SE
 使用されている曲は8曲ほど。どの曲もプレイ中に耳障りに感じることはなく、BGMとして可もなく不可もなくといったところです。SEも使われています。こちらの方も特に問題ありません。どちらもフリー素材を使っているようですね。
▼総評
 「政治劇」という珍しいテーマも手伝ってか、真新しさが興味をそそります。政治というものを扱っているだけに、18禁というのも納得です。エロだけではなく、血なまぐさいシーンも多々あることでしょう。細かな荒は目に付きますが、作品そのものの魅力を下げるほどではありません。それでもまぁ、背景エフェクトは手を入れて欲しいですけれども。
 個人的には今後に期待したい作品です。ただひとつ注文を付けるとしたら、やるなら徹底的にやって欲しいということかな。ジャンルにある「政治」と「活劇」の究極的な形としてはクーデターがありますが、すでに舞台背景で使っちゃってますし、安易にそういうオチに流れるのだけは勘弁して欲しいですね。どんな形になるかは分かりませんが、政治力で決着を付けてもらいたいところです。まあ、どんな結末になっても唯さんは人生をリタイアしてしまいそうな気がするなぁ。その反面、それぐらいやってもらわなきゃ困るなとも思ってますが。
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