マクスウェルの悪魔 体験版

■WOS/ねこっぷり
■吉里吉里2/KAG3
■アドベンチャー
■18禁
http://www.avg200.com/wos/

                                 (2004.01.16)
▼あらすじ
夢をみる。
世界だ、秩序だ、混沌だ、とワケのわからない抽象的な言葉が飛び交う夢。
そこでの俺は中心で、一参加者で、傍観者。眼下に広がるのは、無数の悪魔の屍と金に輝き飛び去る蝶の姿。そんな世界が頭の中を駆けめぐる、とても奇妙な悪夢。だが、目覚めと共に見たものは霧散していく。覚えているのは、底知れぬ不安感とじっとりとした疲れ、そしてマクスウェルという言葉。

半年ぶりに妹が帰ってきてから見るようになった夢。妹に対して緊張などする俺ではないが、どこか気が張ってるのかもしれない。あまり気にしないようにしようと、ベッドから降りてブラインドを開ける。
「今日も暑くなりそうだなぁ」
眩しい夏の日差しを浴びて考える。1学期が終わるまであと一週間。
その1週間が忘れられないものになるのだと、後に思い知ることになる――。
▼概要・システム
 ジャンルというか、どういったタイプのお話かはあまり見えてませんが、遊んでみたところからいえば、主人公の周りで何かが蠢いている(世界でも人でも組織でもOK)学園ものアドベンチャー。とりあえず、ただラブコメするだけではない感じです。

 システムは吉里吉里2を使用した、画面下部のウィンドウにメッセージが表示されるタイプのアドベンチャーだが、下校時に校内と校外のマップが表示され、いくつかの場所を選び行くことができる。おそらく攻略対象となる女の子へのフラグ立ての一環で、それ以外の目的はないと思われる。あとはまぁ、選択肢が出てきて選択により展開が変わるといった、ごく普通のもの。右クリック1回でメッセージ消去、2回でコンフィグ画面が登場しますが、項目も現在の状態を示す点も白でわかりにくいので、指示点は赤とか目立つ色にした方がよいと思います。
 この体験版では、メインヒロインのひとりの中盤手前ぐらいまでプレイすることができます(選択肢次第では、そこまでいけませんけど)。残りの攻略候補キャラは顔見せ程度かな。あとキャラクター説明のおまけが付いています。
▼シナリオ・テキスト
 シナリオは、日常生活を営む主人公に何かが浸食、接触してくる。主人公自体はそれについて気にもとめないが、周りの人間はそれを見守っているといった感じでしょうか。知らないのは自分だけで、周りの人間は何かしら知っていて時期を見守っているというタイプ。現時点でつかめるイメージは、ゲームの舞台となっているのは果たして現実か否か、死んでいるはずの人間が登場しているのではないかといったぐらいかな。あとはタイトルである「マクスウェルの悪魔」という言葉の意味をどこまで理解できているかが、このゲームを楽しむ(あるいは予想する)鍵だと思います。で、プレイ可能な範囲での話ですが、かなり駆け足で展開していきます。伊達に「体験版だからしょうがない」と端折っていることはあります。この辺りは、完成までにどれだけ手間がかけられるかといったところになるのでしょうね。ですが、突然終わるのはマイナスかと。謎を引っ張るのはいいのですが、もう少しきりの良いところで終わるなり、最低限「この体験版はここまでです」的なエクスキューズを入れた方がよかったと思います。
 テキストは普通の学園ものエロゲーとあまり変わりません。描写よりもノリを重視するタイプです。多少の誤字はありますが、結構読み進めやすいです。プレイにかかる時間は、一時間前後ほどです。エッチぃシーンもありますが、それほどエッチじゃなかったような。
▼イラスト・グラフィック
 キャラクターの原画等はいいほうだと思う。立ちグラフィックの数は豊富で、通常の立ちとバストアップの2種がそれぞれ用意されている。Readme.txtの「立ち絵なんか150枚以上あったりします」というのはさておき、どのキャラクターも表情が豊かであることは確かです。塗りの方も上を見ればきりがありませんが、世間的に見ても問題ないレベルだと思います。イベントグラフィックは妹と幼なじみのレズ絵と幼なじみとのエッチ絵の首の位置が変な気がする以外は、それほど問題ないかと。背景は実写にエフェクト。移動マップはもちろんCGです。背景でケチを付けるなら、雨降りのシーンはもっと雨のエフェクトを派手にするか、画面を暗くするとそれっぽい感じになると思います。
▼サウンド・SE
 曲はReadmeによると、13曲収録されているそうです。これも面倒なので数えてませんが。特にケチつけるところもなく、いい感じの曲だと思います。BGMとしてもなんら問題ないですし。SEもちゃんと使われています。OPにはムービーが使われてます。3Dモデリングのレベルはちょっと足りないですが、ムービーまとめ方はなかなかいいと思います。
▼総評
 とりあえず現時点の情報を整理してどういった類のお話であるかアタリをつけてみると、「哲学的な部分を含んだSF」というのが近いような気がします。多分に「マクスウェルの悪魔」という言葉に引きずられて「SFっぽい」と思ってることは否定できませんけど。
 それはさておき、ゲームの方ですが結構いい出来だと思います。テキストにエロゲー的耐性や、シナリオライターの俺々なところが若干気に掛かるかもしれませんが、トータルで見ると比較的完成度の高い体験版だと思います。とはいえ、だいぶ端折っているとのことですから、「完成度が高い」はちょっと言いすぎかもしれません。ゲームの舞台が1週間とのことですが、最長で4日目までプレイができます。残り3日でまとめるのはちょっと難しいのではと思うし、今のテンポでシナリオが進むと、各キャラのボリューム及びシナリオ面の薄さが危惧されます。攻略対象キャラが何人かは分かりませんが、現時点では共通部分が多そうなので、よりそう感じてしまうかもしれません。
 文句付けたところで今はまだ体験版ですし、お話の方向性もまだちょっとわかりませんが、それなりに期待してよいソフトではないかと思います。


※マクスウェルの悪魔
――イギリスの理論物理学者、ジェームズ・クラーク・マクスウェルが著書、「熱の理論」で定義した悪魔のこと。速度の大きい分子だけを一方に通行させることで、一様な温度の気体に温度差を作り出す能力を持っている。非可逆現象である熱の移動を可逆現象に変えるという能力を示すものであり、これが存在すれば熱力学第二法則をぶち破り、エネルギー保存の法則の中で永久機関を生むことですら可能になる。
 実のところ、こういう悪魔は存在しない。このような存在がいないために法則が成り立つという、逆説的な論理補助として使われる。
 語呂がいいのかなんなのか、よく超常的なエネルギーを操るものとして、漫画や小説で使われることがしばしばある。

 これの説明をする暗喩が、主人公の夢の中で語られている。非可逆と可逆。そしてそれを自在に操る能力というのがキーポイントではないだろうか。生きている人を殺すことはできる。だが、死んでいる人を生き返らすことはできない。もしそれを可能にする能力があるのなら? それが現実世界でのことなのか、精神的な世界の事であるのかはわからないが、そういった使い方(怪しげな組織なら世界のナントカに使うとか言い出しそう)をするんじゃないでしょうかね。単純な予想としてはそんなとこ。
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