▼総評
  現状で言えば、ゲームとして期待をすると肩すかしをくらうかも。ゲームではな
く、創作同人漫画の豪華なデジタル版+αとして視点で見れば悪くない。一部、
カットの重ね合わせがちょっと変かなと感じるところはあるが、CGを始めとした全
体的なコーディネイトは申し分なく、むしろ良い方ではないかと思う。この絵柄で
創作漫画同人誌だったら、間違いなく買ってる(だからこそ、ここに体験版がある
のだが)。もっとも、ストーリー的なところが分からないので、ここについては保留
となる。
 どちらかといえば、システム的な部分のマズさが目に映る。特にゲームの進行
スピードが問題。これを例えるなら、Aが読んでいる漫画をその後ろから覗き読ん
でいるBの心境、という状態だろうか。Bはすでにそのページを読み終えているの
にページを先に進めないAに対する焦燥感、という感じが一番しっくりくる。漫画
に近い『Mimosa』のシステムでは、「プレイヤーの読む速度」という概念がすっぽ
り抜け落ちているように思える。もちろん、制作者の考える「ベストな演出スピー
ド」があり、それを見せたい(表現したい)というのもあるだろう。それに対する次
善の策として「早送り」ボタンがあるのだろうが、それがほとんど役に立たないレ
ベルのモノであるのも事実。クリックし続けていないと機能しないというのは、論
外だ。システムと演出のせめぎ合いの中、どちらを取るか悩みはつきないと思う
が、可能な限り快適にプレイできるような選択をを望みたいと思う。
 おそらくこれは、完全なノベルや映像作品だったら起こらなかった欠点であった
と思う。どちらの要素も兼ね備えたシステムだからこそ、文字(セリフ)を読ませる
という部分があるからこそ、起きた衝突なのだろう。

 現在、体験版の通販を行っているらしく、しばらく後にはダウンロード版を作るよ
うなので、興味があるのなら試してみるのも一興です。



 蛇足で大きなお世話であることは百も承知だが、制作者側が「Littlewitch」の
作品、『白詰草話』か『Quartett!!』をプレイしたことがないのであれば、一度は触
れてみても損にはならないと思う。おそらく、目指しているものの答えのひとつが
そこにあるのだから。
▼サウンド
 使用されている曲は6,7曲ほど。そんなに悪くはないと思うが、あまり印象に
は残らない。BGMに徹しているといえば聞こえはいいが、どこか物足りなく感じる
のも確か。あと、一部の曲にちょっと高い音の旋律を使っているが、そこに関して
のみ言えばちょっと耳障りだった。SEはないです。森などの場面転換の際などに
入れてもいいような気がする。仕様として無いのか、未完成だから入っていない
のかは不明です。
 ゲームには直接使われないが、CD内にプロモーション用のムービーが収められ
ている。こちらの曲は結構良い感じ。シナリオ的な面で言えば、ムービーの方が先
の方の展開を彷彿させており、体験版より興味を持たせられるのではないかと思
ったりします。
▼シナリオ・テキスト
 収録されている第1章はプロローグ的な内容なので、ストーリーの良し悪しの
を決めるのは難しい。逆に言えば、猛烈に引きつけられる場所、もしくは落胆す
る部分がないともいえる。分かっている範囲でのパーツをかき集めてみた感じで
は、主人公を助けたミモザという少女自身が伝説の体現者的存在であるとか、
それを巡って軍と村の対立・戦闘が始まり、主人公はどっちにつくのかあたふた
したり、とか? ミモザと森はワンセットで始めて意味をなすような気がしたりする
んですけどね。
 選択によって物語の分岐があるかどうかはわかりませんが、あったとしても総
話数10章ぐらいじゃないでしょうか。ちなみに1章のプレイ時間は、おおよそ40分
ぐらい。ただ、時間から想像できるほどボリュームはないので注意。

 テキストについては、取り立てて文句を付けるところはない。理由は普通の
ADVやビジュアルノベルなどに比べて圧倒的にテキストが少ないこと。ぶっちゃ
けていうなら、漫画のセリフについてケチつける人ってあまりいないじゃない? 
ということになるかな。


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▼概要・システム
 都を覆い、悲しさと絶望と、そして死をもたらし続ける黄死病。
持てるすべての薬も術も、その病から人を救うことは叶わなかった。
だが、ひとりの若き青年医師は、周りの制止を振り切り、
一縷の望みを賭けて死の森、ウェルシェへと分け入ってゆく。
死者をも蘇生させると言われる薬草。文献にだけその名を残す薬草を求め、
ウェルシェをさまよい歩く青年・クラインは、いつしか森の闇に飲まれていく。
 意識を取り戻したクラインは、そこでひとりの少女と出会う。
少女は森を散歩している時にクラインを見つけ、家へと連れてきたのだという。
ミモザと名乗る少女は、クラインを問いつめる。
何故、森へ入ってきたのか、と……。


 国に蔓延する流行病の治療法を探して、森の中にある名もない村を訪れた青
年と村の少女との出会いを描いたADV。使用しているシステムはマクロメディア。
そのためか、Macintosでもプレイが可能です(Mac用のインストーラーも入ってま
す)。でも、Mac用の動作環境が記されてない。それでいいもんなんだろうか? 
セーブ数は8つ。プレイできるのは第1章(チャプター)のみ。総話数が何話にな
るかは不明です。紙のパッケージに小さなブックレットが付属。ブックレットには、
メインキャラクターたちが紹介されています。

 正確にはADVというのは間違いかもしれない。基本的には物語に沿って漫画
のコマとセリフが表示されていき、自動で話が進んでいくからだ。システム面で
の操作と、物語の区切り意外ではマウスを使う機会がない。デジタルコミックとい
うか、「Littlewitch」が『白詰草話』『Quartett!!』でメインシステムとして採用して
いるオリジナルシステム「FLOATING FRAME DIRECTOR SYSTEM
(以下「FFD」)」の劣化版、というのが一番近い。
 基本的な機能はセーブ/ロード(バグあり)、チャプターの最初へ戻る、タイトル
画面へ戻る、一時停止、再生、早送り、次のチャプターへ(未実装)といった感じ
で、ゲーム言うよりはビデオデッキやDVDプレイヤーの操作に近い。パッと見で機
能が分かりやすいというのはいいのだが、「早送り」には最大の欠点がある。「早
送り」ボタンをクリックし続けて(押し続けて)いないと、機能しないという点だ。自
動で物語は進んでいくのだが、そのスピードはかなり遅い(これはプレイヤーの
読み進める速度によって印象が変わると思う)。だが、「早送り」ボタンを押し続け
た状態でも、かなり遅いので、結構イライラする。「FFD」のように早送り速度を
x2、x4、x8、x16……など可変できるようにし、機能をロックできれば、かなりスト
レスは減ると思う。ぜひ実装を求めたい(現状の早送りは、システム的にはx2以
上なのかもしれないが、実感ではx1.2倍とかそんなスピード。ちょっとだけ早くは
なってるな、程度でしかない)。

 1章はいくつかの場面ごとに区切られており、1場面が終わると画面左にある
背景CGをクリックして次の場面へ進むことができる。左に置かれた背景CGは数
枚配置するスペースがあるので、ここでの選択によりストーリーが変化するかも
しれない。存在自体が非常に地味なので、選択する場面になったら背景CGの枠
をチカチカ点滅させるなりして、もうちょっと存在をアピールしてくれると親切かも。
▼グラフィック
  キャラクターのデザインは文句なし。無理矢理文句をつけるとすれば、ゲーム
には未登場の50歳おっさん将軍の顔が若すぎないか? ってことぐらい(ゲーム
には出てこないが、ブックレットには載ってる。名前だけとか、ムービーには出て
くるんだけど)。歴戦の将軍っていうのなら、もうちょっと皺とかつけて厳つい感じ
にしたほうがそれっぽいイメージがあるもので。少女漫画系のイラストなので、そ
れがダメな人以外は問題ないと思います。イラストやCGの人というよりは、漫画
畑出身の人っぽい気もします。CGの塗りも問題なく、レベルは高い方だと思う。
 背景は実写に若干のエフェクトをかけたもの。だが、次々とカットが重なっていく
ので、あまり印象にはなかったり。シーンの冒頭のカットがほとんど載っていない
状態ぐらいでしかまともに見る機会はないので、現在どこに居るかを見せるため
のイメージカット的なものだととらえておけば間違いないと思う。そこに重なるカッ
ト内(漫画で言えばコマ)の背景は、一色塗りつぶしだったり、トーンぽいモノを使
っていたり、普通に背景が描かれているものなど様々です。この場合に背景は
CGで描かれており、レベルは高め。

 個人的には、紙のパッケージやブックレット、CD盤面などを含めたトータルデザ
インがちゃんとまとまっているのが好印象。この辺りまできっちりと手をかけてい
るサークルはないので、いい意味で目立った要素です。


■in the air
■Macromedia Projector(Ver.10.0.0.204)
■アドベンチャー
■全年齢
■100円
http://air.sub.jp/mimosa/
                               (2004.10.05)


Mimosa TRIAL EDITION

場面によっては、カットが上下、左右にスクロールするこ
とも。これでゲーム全体のスピードが速ければ、特に文
句はないのだが。現状では、テンポが悪すぎ。
メイン画面には、こんな感じでカットやセリフなどが表示
されていく。フキダシの形が画一的なので、ちょっと面
白味がない気がする。
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