夢剣 Szenario Eins

■因果堂Type-IG.
■NScripter
■夢現ファンタジーノベル
■全年齢
http://www.interq.or.jp/www1/inga/type-ig/

                                 (2003.11.05)
▼あらすじ
気が付くとできるようになっていた夢の世界への干渉。
そこではすべて、自分の思うがままだった。ただひとりの住人を除いて。
しかし、そんな力は現実での暮らしの中ではなんの意味もない。
人と違う力。人あらざる能力。そして、形こそ違うが幼なじみも有していた異質な力。
互いの「場違いさ」を認めあう、たったふたりだけの秘密。
だが、どこからともなくそれを求めて現われる存在。同じ場所で迫り来る異形。
「お前をこの瞬間から敵と認める」
この瞬間、戦い火蓋が切って落とされた。
▼概要・システム
 ファンタジーなビジュアルノベルというかアドベンチャーというか、そんなゲーム。夢の中とバトル、その他はビジュアルノベル形式、日常生活はアドベンチャー形式と差別化されている。だが「なんでここでビジュアルノベル形式?」と頭をひねるところもあり、イマイチしっくりこないところも。テキストの読み返しは、できるところとできないところがある。クリア後には「おまけ」が出現し、CGとBGMを堪能することができます。プレイ時間はだいたい3-4時間ほどかと。

 勝手な前提ですが、このゲームは「小説をビジュアルノベル・アドベンチャーに落としたもの」として考えていた方がいいです。主人公(ほぼ作者)のアクというか思考(物語の指向)が強すぎて、プレイヤーが介在・選択する余地はほとんどありません。1シナリオしか遊べないため、よりそう感じるのかもしれません。
▼シナリオ・テキスト
 最後までプレイできるのは、メインヒロインのひとりである彼方明日シナリオのみ。いくつかの選択肢は出現するものの、ストーリーの流れには影響はない。また、何人か未登場キャラが登場するが、今回のストーリーにはからんできません。

 シナリオは「異質な能力を持ったふたりとそれを狙う敵との戦い」というのが大まかな流れ。個人的には「子犬のようにまとわりつく幼なじみの少女を、稚拙な愛情の表現としていじめ倒す主人公」というパターンが嫌いなので、それほど面白いとは思えませんでした。同じような能力を持った者同士、傷を舐め合ってという視点もありますが、それを加味してもどうかなぁという感じです。主人公たち能力については、ツッコむのは無粋と思いつつしっくりきません。主人公の能力発動のプロセスの統一が図られていないような感じで、最初の発動では緯度経度からなる絶対座標で指定しているかのごとく語るわりに、それ以降では右腕を基準にした相対座標で指定していたり、X軸は上下±で座標指定しているのにY軸は「幅○メートル」と曖昧な座標だったりしてます。対象物のイメージによる創生も、イメージソースは文字や写真、映像などから得たものがほとんどっぽく、はたしてそれで実在の対象物と同じだけの効力、威力が具現化できるのか怪しいなぁとか思ったりしています。まぁ「ファンタジー」ですから、都合の良いところや細かい設定を突っつき回してどうこういうのは、正しくない楽しみ方かもしれません。
まぁ、私自身に論理的読解能力が欠けているために楽しめないというのも否定できないかもしれませんけど。

 テキストはとりたてて悪いと思いませんが、ギャグが身体に合うかどうかが評価の分かれ目になるでしょう。それと戦闘などで勢いを重視するのはかまいませんが、句点を省いているようなところはあんまり良いとは思えません。
 また、文字ウィンドウはもう2ラインぐらい狭めてもいいのではないかと思う。ウィンドウ内の下段2ラインはほとんど使われていないので、冗長のきらいがあるテキストをシェイプアップすればそれぐらいは可能になるはずです。
▼イラスト・グラフィック
 キャラクター周りは塗りも原画も問題ないでしょう。ただ、終盤のイベントCGはベタ塗りっぽく感じられ、前半のイベントCGとの差違が見られます。可能ならば、統一を図るべき。背景は基本的にCGでごく一部に実写を使用している。いつもなら突っ込むところだが、核や炎といったイメージ的な部分での使用なのでとりあえず不問。とはいえ、真っ赤な背景や真っ青な背景はどうかと思います。その他の通常背景は、それほどレベルが高くありません。さらに学園内の廊下だけ無料素材CGを使用しており、他の背景とのクオリティバランスが悪い。この廊下を取って新たに描き直すかどうかした方が、作品の統一観という意味ではよいかもしれません。なお、クリアするとCGモードが出現しますが、これまたすこぶる使いにくいです。
▼サウンド・SE
 新規に人を迎え入れたためか全27曲と多く、かなり贅沢な使い方をしています。質の方は良いものもあれば、変な感じがするものもあります。トータルで見れば良いんじゃないかと思いますが、絶賛できるほどのものでもありません。戦闘周りの曲は、総じていい感じかな。SEもところどころ入っています。
▼総評
 完成時に追加されるシナリオがどういったものかは分かりませんが、現時点での中身は「主人公と幼なじみの夫婦漫才」と「異質な世界の者とのバトル」がほとんどを占めています。このふたつの要素を受け入れられれば、面白いと思えるでしょう。私は前者がダメ、後者がどうもしっくりこないので、それほど面白かったとは言えません。シナリオの流れも上記ふたつの要素を繰り返しているだけで、驚きの展開やどんでん返しがなく盛り上がりに欠けているのも原因のひとつだと思います。
 主人公と幼なじみの関係が前提条件になっている物語なので、完成版では他の女キャラとラブラブになるのではなく、それらを鍵としてふたりを取り巻く世界観の謎、能力の謎といった部分の解明に費やされるのではないでしょうか。
 HPで体験版が落とせますし、ショップへ行けばこれも売っています。これらを遊んで判断するのがよろしいかと存じます。

 それと、火ぃ崇めるのはアーリマンでなく、主神アフラ・マズダの方だと思うのだがどーよ。
戻る
inserted by FC2 system