サンクトペテルブルグの悪魔T版
	■UNDER WORLD DOREAMS ■吉里吉里2/KAG3 ■アドベンチャー ■全年齢 ■100円 ■http://underworlddreams.client.jp/ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2005.06.10）
	▼概要・システム
	時は現代、場所は帝政ロシア時代の首都サンクトペテルブルグ。祖父の死に より、ロシアの闇社会を統べる一族の当主になった15歳の少女の物語。 　システムは吉里吉里２を使用したサウドノベル。ゲーム中にイラストの類は一切出てこないのですが、ブックレットにキャライラストが描かれているので、おそらくビジュアルノベルに進化するものと思われます。テキストは縦書きで、システム周りは充実してます。レスポンスもいいし、デザインもいい。文句をつけるなら、タイトル画面で右クリックするとメニューが消えるぐらい。 　また文句とは別に改善が可能ならば、システムメニューの「Return」がどんな機能を持っているのか分かりにくいので、項目名を変えたほうがよいのではないかと思う（仕様としては、オートセーブに近い）。システムメニュー項目の左側が空いているので、項目にカーソルを重ねるとその項目の説明が出るとかどんなもんでしょうかね？　あと、「History（テキストの読み返し）」が横書きになっているのは、吉里吉里２の仕様上しょうがないんでしたっけ？
	▼シナリオ・テキスト
	作者がreadmeで記しているように「プチ『ゴッドファーザー』みたい」な作品になる予定だそうです。タイトルからして伝奇ぽいかなと思っていたところにコレですから、意表をつかれました。物語は主人公である15歳の少女、サラが全寮制の学園から家に戻ってきて組織の継承式を行う、という本編のプロローグにあたりそうな部分まで。ちょっと現状の説明が多いのが残念なところです。ヒロインの雰囲気は漫画版『ヘルシング』で幼くして家を継いだインテグラ。従者もヒロイと同じ歳（厳密には違う）の少女です。今後、一族への忠誠を装いつつ成り代わろうとする下部組織やら部下やらもバリバリ登場するらしく、ヒロインこそ少女ですが格好良くて渋いオヤジキャラが幅をきかせそうな物語で、ある意味期待したくなります（その辺も『ヘルシング』っぽいな）。 　ただ物語の方が継承式を巡る水面下での内部抗争で終わるのか、継承後の組織にも及ぶのか分かりません。ネックにはなりませんが、ちょっとその辺も知りたいところです。ボリュームは20分かかるかどうかです。 　テキストの方は、それほど頻繁ではないようですが、シーン描写用の三人称と主人公視点の一人称が入れ替わるようにして進んでいきます。おそらく、本編では裏切り者や別組織の人間の視点も加えられるかもしれません。たまーに「これ主人公の一人称だと変じゃないか？」という部分があり、小首をかしげたくなる部分があります。どっちとも取れそうな書き方をしているので、その辺りの校正もお願いしたいところです。また、意味のないところで行頭が一文字空いていたり、段落わけしてないのに文と文の間が一文字空いていたりと謎な部分が多い。縦書きに変換した際のミスなのか、単なる文字抜けなのか分からないが、直した方がいいと思う。
	▼イラスト・グラフィック
	ゲーム中にキャラクターイラスト関連は一切なし。後書きを見ると立ちイラストは予定にないけれど、カッコイイイベントCGは入るとのことです。サウンドノベルとビジュアルノベルの中間みたいですね。個人的には、立ちキャラグラフィックはあった方がいいかなと思うので、可能ならばぜひお願いしたいですね。背景は実写にエフェクトをかけたもの。エフェクトはかなり弱めにかかっており、オリジナルの写真の雰囲気が残っています。それにしてもまぁ、よくこんな写真を見つけてきたというべきでしょうか。それとも、城とか宮殿とかを集めたのフリー素材集があったりするのかな？
	▼サウンド・SE
	使用されている曲は12〜13曲程度。ゲームのボリュームの割には多い。比較的落ち着いたものでまとめられており、結構いい感じです。サークル内調達かフリーかは不明。曲のうち一曲が極端にサーノイズがはっきりと聞こえるので、フリー寄せ集めなのかなと思う。SEもちゃんとアリ。こちらもまずまずで、問題ないデキ、使い方をしている。
	▼総評
	18禁か全年齢かは不明ですが、設定的にエロはあってもおかしくありません。主人公はエロ要員にはならいないでしょうが、その他のエロと人殺しまくり描写で18禁にするという可能性はあるかもしれません。まぁ、おそらく全年齢だと思いますけどね。なんにしても非常に興味深い一本です。 　伝奇や恋愛ものが主流の同人ノベルの中で「ロシアンマフィアもの（厳密には違うみたいですけど）」というのは、それだけで他のサークルとは一線を画す強烈な個性を放っています。シナリオをどう転がすかは分かりませんが、渋く、そして格好良く締めまることを期待したい。 　システム面はそれほどカスタマイズされているわけではないが、デザインを含めてなかなかに良好。ビジュアルイメージを優先したテキストの配置法、およびテキストそのものに若干の不安は残るものの、目くじら立てるほどのものではありません。 　個人的には、珍しいタイプの作品という点で期待したい作品です。 伝奇、鬱、恋愛、学園モノなど、ありきたりなジャンルに飽きていて、変わったものを触ってみたいと思うなら、お勧めしたい一本。 　主人公（ヒロイン）は、『ヘルシング』のインテグラ（子供Ver）や『高機動幻想ガンパレードマーチ』の芝村舞（もうちょっと一般常識はある）、『星界の紋章』ラフィール（あそこまで尊大じゃない）タイプなので、その手のキャラが好きならチェックしておいていいかも。一般的にはツンデレに相当しうるヒロインですが、主人公は男ではないので、そっち方面が趣味の方に合うかどうかは微妙です（でも百合な人からみた姉御肌っぽいキャラはどうなんだろう？）。 　まぁ、どちらかといえば、小娘を相手に権謀術数を仕掛けるマフィアや老年ながらも逞しい執事といった「粋で渋いオヤジたち」の活躍が見たいので、ぜひともそっちの方に力を入れてくれることを期待します。