Steel Craft テストVer.

■Electra
■吉里吉里2/KAG3
■オリジナルテキストアドベンチャーゲーム
■18禁
■無料
■http://www.electra-game.com/

                                 (2007.04.20)
▼あらすじ
新たに発見された高エネルギー体「マイクロカーリタス」。
日本、インド、そしてソビエト連邦の各領海で発見されたこのエネルギー体は、世界の勢力地図を塗り替えてしまう。
その後、世界は「マイクロカーリタス」を利用し、二足歩行人型工業ワーカーマシン「Steal Craft(SC)」を生み出す。工業機械として生み出されたSCは、その有用さから軍事用に転用されるまで時間はかからなかった。

2017年、ソビエト連邦による北海道侵攻により、日本は戦争状態に入っていた。
最前線が近い函館に、幼い頃、テロリストに両親を殺された一人の少年がいた。
人が減りつつある街でSC整備工場を経営する祖母と暮らしていたが、ついに函館の地を疎開することになった。
だがその前夜、街はソ連の襲撃を受け、祖母は少年を守って亡くなってしまう。亡くなる直前、祖母からオリジナルSCを託された少年は、否応なく戦いに巻き込まれていくこととなる。
▼概要・システム
 祖母の残したオリジナルのSCを手にした少年を描いたビジュアルノベル。サークル発表ではオリジナルテキストアドベンチャーゲームとなってますが、ビジュアルノベルの方が通りがいいと思います。

 システムは吉里吉里2。基本的な部分は何もいじくっていないようで、デフォルトの機能はすべて実装されています。セーブやロードも可。システム回りでケチつけるところはないのですが、タイトル画面のスタートが「Steel Craft movi'n on up now」となっており、一瞬だけ「えーと、どこでスタート? これでいいの?」と考えてしまいます。凝るのは構わないのですが、もうちょっと分かりやすくてもいいと思います。せめて、マウスカーソルがかわるだけでなく、選択できるテキストの周囲の色が変わる(選択肢にカーソルが合った時に周囲の色が変わるようなあれ)があってもいいのではないかと思います。
▼シナリオ・テキスト
 シナリオは、夢を通して主人公の幼い頃の回想から始まります。報道番組や友人が傭兵部隊へ就職することなどから戦時下であることを説明しつつ、主人公が託されたSCに乗り込み一戦を終えるところまでです。プレイ時間は30分ほどで、ちょうどメカものアニメの第一話って感じのプロローグでしょうか。この時代の日本人も今の日本人と大きく変わらないのか、戦時下でありながらどこか「他人事」といった感じで、淡々としています。主人公もそんなところがあるためか、シナリオの流れも淡々として、イマイチ盛り上がりに欠けています。体験版のトリには、SCによるバトルがあるのですが、街で出会った謎の少女のお陰で大した苦労もなく勝ってしまうので、やはりちょっと盛り上がりません(機体性能に差がある、というのもありますけど)。プロローグで短いというのもあるかもしれませんが、もう少し物語にメリハリが欲しいですね。選択肢はありません。最後まで一本のルートとなってます。

 テキストは普通だと思いますが、一文一文が長めなのがネック。それほど長くない一文も、段を変えずにすべて繋げてしまうため、画面が文字だらけになるのもしょっちゅうです。多少なりとも段を変えて、申し越し読みやすくしても良いのではないでしょうか。また、キャラクターのセリフの前には名前が入ります。サークル発表のジャンルは「オリジナルテキストアドベンチャーゲーム」ですが、実質的な形態はビジュアルノベルなので、鉤括弧の前の名前は取って欲しいと思います(それとも今のビジュアルノベルは鉤括弧の前に名前を付けておくのが普通なのか?)。また、テキストの行間が狭く、ここにルビが入るとかなりキツキツで読みづらいので、もうちょっと行間を空けて欲しい。
▼イラスト・グラフィック
 キャラクターイラストは、さほど問題ないと思います。ただ、テストVerといっているだけあり、塗りの方はパーツごとに単色ベタ塗りです。サークルサイトのトップにあるイラストとは、かなり受ける感じが違います。また、サークルサイトのトップで見られるキャラクターと同じキャラの立ちグラフィックにはちょっと差がある感じがします。イベントCGだから気合いが入っているのか、立ちグラフィックだから簡素な感じを受けるのかは分かりませんが、もうちょっと双方のクオリティを近づけてくれたらいいなと思う。キャラクターの立ちグラフィック差分は、キャラクターによって差はありますが大体4〜6枚程度あります。
 このゲームのメインともいえるメカは、現時点で3機登場します。主人公の乗るSCと日本製SC「塵無」のデザインは、ヒーローロボット体型で石垣純哉氏や柳瀬敬之氏のラインに近いかな。それに対し、ソ連系のSC「ORCUS」は質実剛健そうなデザインで、ゼニスやフロストに近い感じがします。SC以外のメカとなると、その足下に戦車なんかも出てきます。メカのCGは基本的に3DCGっぽいですが、3DCGっぽいツヤは消してあるようです。また、メカの一部は2DCGで描かれているものもあります。あと、背景に転がってる作業用のSCは、小型のウォーカーマシンみたいです。全体的にメカのデザインは良い感じなので、そちらに期待している人は安心していいと思います。
 イベントCGは結構な数があります。ただ、メカが出てくるシーンは、基本的にイベントCGと同様の扱いとなっているので、それをイベントCGとして認識して良いのかどうか判断に困るところです(メカのCGを抜かせば、1枚だけ)。
 背景は2DCGと3DCG、あとちょっと確信はできませんが、実写にエフェクトをかけたものもあるようです。多少ちぐはぐっぽい印象を受けますが、色々なところから背景をチョイスしてきたからかもしれません。
▼サウンド・SE
 曲は7〜8曲ほど。戦闘シーン以外の曲はおしなべてムーディーな感じで、あんまり印象に残りません。BGMとして機能しているのは間違いないのですが、それでもなお印象が薄い。ちょっとボリュームをが低いと、「あれ、鳴ってた?」と思ってしまうほどです。一転、戦闘シーンは派手派手です。日常シーンと比べてメリハリはついていますが、なんかこう今一歩という感じです。
 SEはあります。日常的なものからコンピュータの起動音、実弾系射撃武器の発射音などかなりの数のSEが使われてます。ただ一ヶ所、演出なのかミスなのかは分かりませんが、メッセージを送らない限り延々と爆発音のようなものが流れ続けていた場所があります。
▼総評
 本編に対しての引きはあるけど、惹かれるところは少ないといったところでしょうか。
 主人公にちょっとしたトラウマっぽいものがあって、たぶん特殊な能力を持っていて、さらに肉親が残した謎の高性能メカに乗る! ついでに謎の美少女もついてきます! と聞いて「あー、あんな感じ?」とか「アレに似てるよね、アレ」とか思う人向けの一本だと思います。あとメカ好きやロボット好きな人にもお勧めかも。

 メカやロボットものの、ある意味お約束的な冒頭はある程度の安心もありますが、そうであるが故にインパクトが弱いところもあります。加えてあまり盛り上がらないテキスト・シナリオなので、メカもののわりにはちょっとテンション低めなのが懸念材料です。また、サウンドも淡々としているため、盛りあがらなさに拍車をかけているような気もします。おそらくリアルな世界観でのメカものを描こうとしているのではないかと思うのですが、もうちょっとはっちゃけ……すぎるのはちょっとマズイかも知れませんが、熱い感じにしちゃっても良いような気がします。確かに、一般人が初めての戦闘で人を殺して平気なわけはないんですけどね。

 個人的には今しばらく様子を見たいところです。もう何本か試してみて、この先のシナリオが盛り上がらないようなら、忘れていっちゃうかもしれません。
 それと、上記のメカデザインについてサッパリ分からないという人がいるかもしれませんが、そういう人はスルーして問題ないです。あそこだけは、分かる人が分かればいいって感じなんで。
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