たましずめ 体験版

■Werk
■吉里吉里2/KAG3
■ビジュアルノベル
■18禁
■200円
http://katze.loops.jp/Werk/
                                       (2004.04.29)
▼あらすじ
いつものように買い出しを終え、いつものように森の近道を歩いている。
だが、今日に限っていつものようにはいかなかった。
森の中で、得体の知れないバケモノと出会ってしまったからだ。巨大な昆虫を思わせるその姿に、本能はガンガンと警鐘を鳴らす。
なんだか分からないが、アレはヤバい。このままでは…………そう、間違いなく喰われて終わりだ。

恐怖に駆られた俺は一目散に逃げ出すが、すぐに追いつかれてしまう。手にした買い物袋を投げつけても、ヤツにはなんの効果もない。コイツからは逃げられない。勝てっこない。喰われるしかない。

諦め悟ったその瞬間、上空から飛来する炎の矢がバケモノに突き刺さる。次いで現われたのは、弓を手に緋袴に身を包んだ幼なじみ。弦を弾き、矢を射てバケモノと対峙し、やがて撃退した彼女は、わずかな逡巡の後に口を開く。
「あなたの知らない、もうひとつの世界を知る覚悟がありますか?」
彼女から差し伸べられる、真実への導き手。興味はある。だが、それ以上に直感めいた何かが、知ることを渇望していた衝動に身を任せた俺は、差し出された手を迷いなく握り返す。

こうして俺は、もうひとつの世界……妖怪の住まう世界へ迷い込むことになる。
 
▼概要・システム
 冬コミでゲットした伝奇ものビジュアルノベルの体験版。正確には『ヴェルらじ』という広報的なディスクの中に収録されているものです。サークルがイベントなどで発行するペーパーやディスクマガジンのような位置づけのようで、過去に製作した『マリ打て』(「マリみて」の二次創作作品。タイピングゲーム)の体験版も収録されています(こちらの方は現在、ショップなどで購入できるようです)。遊んでみましたが、私にはダメでした。難易度の変更によって入力時間は変えられるのですが、パッと見たお題(名前とか用語とか)をすぐに脳内で変換できないのでダメダメです。『マリみて』に興味ないですし。ファンへ向けたアイテムだと分かってますので、的はずれな意見だとは分かってます。はい。他に収録されているのは、「CDについて」と「スタッフクレジット」です。
テキストウィンドウの右左のマージンの違いはこの程度。気にする方が問題かな? 暗くて見づらいですが、ここの背景はCG。イベントグラフィックじゃありませんよ?
▼シナリオ・テキスト
 シナリオは、とりあえず巻き込まれ型で始まっています。危機が去り、主人公=プレイヤーに疑問を抱かせ、その答えを提示する直前で終わってます。そんな訳なので、引きの方は問題ないかと。お話の方向性は、乱暴な言い方をすれば「妖怪人間同士のなわばり争い」が中心になっていくのではないでしょうか。『人狼奇譚(同人ゲーム)』や『コックリさんが通る(漫画)』に近そうな感じです。あとはノベルゲームの標準的な流れとして、ヒロインを手伝いながら心を通わせあったり、助けた女の子と仲良くなったりしそう。主人公も自覚はないがタダの人ではないようなので、「実は○○だったのかー!!」というのお約束もありそうです。蛇足ですが、体験版をプレイするより、HPの物語紹介やキャラクター紹介を読んだ方がシナリオに迫れそうというのもちょっと微妙(頒布後に設置されたキャラクター紹介ならしょうがないんですけどね)。

 テキストは普通な感じ。ただ戦闘シーン(戦闘シーンだけというわけでもないのですが、特に顕著なので)では、修飾華美というか普段絶対に使わないだろうという言葉(「翠髪」「燐然」とかね)で描写が入ることが多いです。戦闘シーンの格好良さを演出するためにこういった難しくて字面の格好いい漢字を使うのは珍しいとは思いませんが、こういう漢字がスラスラ出てくる高校生(主人公)というのには、ちょっと違和感を覚えた。分かりにくい漢字など、ざっと調べてみたが見つからなかったのでこちらの勉強不足=知識がないので楽しみ切れてない、という面もあるでしょうけどね(広辞林や漢和辞典にはなかったので、古語系なのかもしれない。そうだったとしても、古文の時間には睡魔と勝負している主人公だから、それはそれで違和感アリです)。
 あと重箱の隅を突くようですが、テキストウィンドウの左右のマージンの多さが違うらしく、隙間の大きさの違いが少し目に付きます。
▼イラスト・グラフィック
 キャラクターデザイン関係は、良い方に入ると思う。特にメインヒロインは、他のキャラクター(とはいえまだ3人しか登場しないが)に比べて力が入っていて、可愛く描かれてるような気がする。立ちグラフィックの方も、それなりの数がある。塗りの方も悪くはないと思うが、影の部分の塗りに少し違和感がある。服装や髪などの影の色がかなり濃いので、暗いというか硬いというか鋭いというか、そんな印象を受けた。イベントグラフィックの出来具合は上々。原画よりも、塗りの力のお陰な部分もありそうな感じ。背景は実写とCG。実写の背景は、かなり軽めのエフェクトがかかっている程度。CGの背景は、それほどはっきり描かれたCGではない。現時点でコレが使われているのは、夜の森だけ。緻密に描かれている訳ではないが、「ああ、森とか木々に囲まれている場所だな」というのが分かるので成功していると思う。昼間のシーンでこれを使われると、実写の背景との差が際だって作品の統一感が崩れそうだが、夜限定で使われるならあまり問題にしなくても良いと思います。
  
▼サウンド・SE
 サウンド、SEは無料素材を使用しているそうです。ものすごく良い訳じゃありませんが、選曲はそれほど外してないと思います。ですが、戦闘シーンで使われているSEはちょっと落ちるかも。音がこもっているというか、シャープさに欠けています。SEと共に切り裂さく、貫く、といった画面エフェクトが描写されるのですが、もっさりとしてスピード感があまり感じられません。
▼総評
 圧倒的なボリューム不足という点をのぞけば、比較的レベルの高い体験版だと思う。ただ、興味は抱けるがのめり込むには何か足りない、新鮮さが感じられずがありきたりな雰囲気が漂っているという点を内包しているのも事実。ひとことでいうなら「無難にまとまりそう」な作品。言い切れないのは未完成かつ、勝手な想像だからです。他の追随を許さない強烈な個性やアイディアの一点突破からくる「なるほど!」とか「こうくるかぁ!」といった驚きは少なさそうに感じます。

 とはいえ、トータルで見たレベルは決して低くなく(視覚効果や演出、サウンド面がちょっと弱いかも)、ごく普通の伝奇ビジュアルノベルとしては、それなりに楽しめる作品になるのではないでしょうか。無難なラインの伝奇ものとして追いかけるなら、悪くないと思いますよ。別の懸念を挙げるなら、最近、メジャーな二次作品の作業をほぼ同時進行で進めていくと発表したので、開発が遅れることぐらいかな(世間的には二次作品の方の注目度は高いだろうし、すでに春完成予定だった『たましずめ』も夏に伸びているという事実もありますから)。
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