天に高く 地に深く 体験版

■nuko
■吉里吉里2/KAG3
■アドベンチャー
■全年齢っぽい
■2、300円ぐらいだと思う
http://nuko.web.infoseek.co.jp/

                                (2004.12.17)
▼概要・システム
 それぞれの思いを胸に、廃ビルに集う9人の男女を描いたアドベンチャー。システムは吉里吉里2。基本的な部分は、ほぼデフォルトシステムのまま。機能的な部分は、すべてウィンドウメニューから使用することができます。タイトル画面からのロードも可能ですが、ロード項目の表示が無茶無茶遅く、使用に耐えられないでしょう。また、ゲーム中に右クリックによるメニューなどといったものもないので、足りているけど微妙に不親切、な印象がある。

 ゲーム本編は、基本的にノベル形式。他人と会話するシーンでは、画面下部にメッセージウィンドウが表示されるアドベンチャー形式になります。
 ゲームのシステムは、9人の視点がパートごとに入れ替わって展開していきます。ザッピングとは違いプレイヤーの思うままに視点(キャラクター)を選ぶことはできず、制作者の意図通りに並べられた各人の視点で物語が進められていきます。順番に時間軸を追っていったり、回想したりと、そのつながりは様々です。選択肢のない一本道の構成を考えているとのことで、体験版でも確かにそういった構成でバッドエンドまで一直線となっています。となるなら、このゲームは分岐が全くないのかとなりますが、それについては2つの予想ができます。ひとつは、各人のシナリオ中にある分岐により次(以降)の視点が誰になるのか、または次は誰の視点で物語を進めてるのかといった選択することにで、分岐が発生するのではないかいうパターン。もうひとつは、ひとつのシナリオをクリアするたび、新たなルート(でも基本的に一本道)が浮かび上がってくる、というパターンです。ただ、このシステムとシナリオ構成が、ゲームの面白さに繋がっているかといえば、かなり疑問です。まぁ、上の予想が当たった場合はゲーム的、下の予想が当たったときは、「表現方法としてのノベルツールを使用」ってことになるんでしょうかね。
▼シナリオ・テキスト
 シナリオの方向性は、「分からない」というのが正直なところ。サークルサイトにあるストーリーを見た感じ、「9人それぞれの自分(or自分の居場所)探し」辺りなのかなとは思うが、プレイしたところでそれが分かるわけではありません。ただ、制作者の意図通りに淡々と読むだけなんですよね、今のところ。意図的に目的を隠しているようなそぶりもありますが、大きな謎が隠されているようではないし、すべてが収束したところで膝を打つようなどんでん返しがあるとも思えず、「何をやりたいかくみ取れないが故に退屈な」シナリオ構成だと思う。また、物語全体の軸となる確固とした主人公がおらず、9人が完全に並列な扱いであるというのも、それに拍車をかけている原因かと思います。。正直、一通り遊んでも何がやりたいのかさっぱり分からない。このゲームで何を表現したいのか全然見えてこないので、少なくとも筆者の視点からすれば、失敗しているんじゃなかろうか、とも思ってしまうシナリオです。

 テキストは、とりあえずは普通と行った感じ。難しい言い回しを多用するのが好みっぽいです。あと、素なのか意図的なのか、間違った使い方やら誤字が多数存在するので、直すなりなんなりしたほうがいいのかもしれません。
▼イラスト・グラフィック
 キャラクターの方は、ちょっとおとなしめな感じはするもののかなりいい方だと思う…………って、もろプロじゃん。淡い色合いの塗りは、作風にあわせてか、儚げな雰囲気がでています。塗りのレベルも高い。立ちキャラのパターンは、立ちで2,3パターンあり、それにくわえて表情差分が豊富にあります。体験版ではキャラクター全員が出ているわけではないので、完成した暁にはさらに追加されるのではないでしょうか。イベントCGのレベルも問題なし。体験版では、3枚と絶対数は少ないのだけどね。背景は実写にエフェクト。エフェクトはかなり薄めにかかっているので、見やすくていい感じ。人が映っているような部分のみ、ちょっと強めにエフェクトがかかっているかな。
▼サウンド・SE
 サウンドは、どれも突出しておらず控えめで、BGMとしては良好で好印象。全体的にギターで製作されたような曲が多い。そのせいか、若干の催眠効果もある。SEはナシです。
▼総評
 ストーリーの外観を一言で表すのなら、「男女9人廃ビル微鬱物語」つーところでしょうか。いやいや、不条理じゃない電波系シナリオとでも言えばいいのかなあ。まてまて、電波的な構成のシナリオという可能性もあるし、うむむ。
 筆者の読書能力の足りなさもあるとは思うのですが、作者が何をやりたいのかさっぱり見えてきません。まだ見えていない他のシナリオをすべて遊び終えた時に分かるんだからいいんだよ、というのならこの体験版は失敗ではないかと思います。少なくとも、この体験版だけで何かしら方向性を出しておかなければ、完成版に興味を持たせる引きがないからです。正直、遊んでいて面白くはないです。「この過程で、なぜこのラストになるのか」「このラストにたどり着いた。だから何なのか」といった、因果関係のようなものが説明されない、もしくはたどり着くまでに読みとれず、漠然とした疑問が残ってしまうのです。これが次のプレイへ繋がる疑問ならばまだしも、そんなことはまったくないので、印象は下がるばかりです。人によってはツボなのかなぁ……。少なくとも、大ブレイクするような作品じゃないとは思うんですけどね。

 まぁ、実験作的な色合いの強いのかな、と考えれば、ああそうね、いいんじゃないそれで? ってところかな。個人的にはお勧めしませんが、上記のことを承知した上でちょっと普通とは違う尖った(正直、尖ったは誉めすぎかも)ものを触ってみたいと思うのなら、手ぇ出してみてもよいのではないでしょうか。あとは、絵師のファンの人とか向けかな。

 現在、サークルサイトで体験版がダウンロードできるので、興味が出てきたのなら是非とも試してもらい、遊んだ感想を聞いてみたいモノです。いや、マジで。だって、良さとか面白さが全然わっかんないんですもの。
 ……まぁ、わっかんないわっかんないとか連呼してるヤツにケチつけられる作者も災難だなぁと思います。
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