闇夜の君
〜終夜の影法師〜Ver.C65 緋山編
■影制作委員会
■NScripter
■サウンドノベル
■全年齢っぽい
■たぶん100円ぐらいだったと思う(頂きものです)
■http://www2.ocn.ne.jp/~shioh/kage/
                                (2004.02.17)
▼概要・システム
 初めて触れたのはいつの頃だったか、と遠い目をしてもいいぐらい前から完成していないソフトの体験版。前回のレビューはこちら。今回は、購入するとロムにペーパーにラミカが一枚付いてきました。詳しいことはペーパーに書いてありますので、今回のレビューはこれに書いてあることが大変重宝してたりします。体験版というか未完成版というか、とりあえず1シナリオは最後まで入っています。だいぶ輪廻転生ものっぽい面が増しているような感じ。

 システム周りは、これまでと同様NScripter。奇抜なことはしておらず、ほぼディフォト状態です。
 ゲームのシステムも特に変化なし。演出として、立ちキャラクターのシルエットの表示に手が加えられました。通常時ではブルーかイエローで半透明で、そのキャラクターが話している時には塗りつぶしとなります。ある意味、表情差分の形態のひとつです。以前に比べ、誰が話しているかが分かりやすくはなりましたが、会話が連続する場面では画面がチカチカするので、コレはコレで鬱陶しいです。それに加え、会話をしていないのに塗りつぶしてたりしてチグハグな印象。やるならやるで、徹底的に統一して欲しい
現在、真ん中の人が発言中。こんな感じで差別化されてはいるが、統一が甘い。 数少ない選択肢のひとつ。でも、シナリオには影響がない程度の差しかない。
▼シナリオ・テキスト
シナリオの方は、なんか色々手が入った模様。
 まず大きな変更部分は「シナリオの新規書き直し」となった点です。ペーパーによりますとと、原案は変わらないけど設定の一部とライターが変わったとのことです。そのためか、全体の構成が少々変わりました。
 まず、以前に比べて、彼女との回想シーンが増えています。増えてはいるのですが、あんまり感情移入には役立っていない気がします。知らない人(主人公故に個性が薄め)と知らない人(すでに死んじゃってる)との思い出話をされても、反応のしようがないとでも言えば分かりやすいでしょうか。いっそのこと、夢でもなんでも使って「過去編」とか作ってしまった方が、主人公と彼女とプレイヤーとの思い出の架け橋になるような気がします(でもそれは、最終シナリオとして登場する可能性があると思っているので、解決にならないかもしれません)。
 そして収録されているシナリオですが、上記の通り新シナリオです。とはいうものの、細かい点は違いますが、前の体験版と終盤手前までの展開はほぼ一緒なので、あまり新鮮味はありませんでした。今回のシナリオのためだけというわけではないのでしょうが、何人かのキャラクターが新登場しています。……登場してはいるんですが、ほとんどキャラが立っておらず、誰も彼も魅力が全然ありません。例えばね、爺さん。アンタ最高にカッコワルイっすよ? 詳しくはネタバレになりますので書きませんが。
 この新シナリオも、前回同様に駆け足で唐突で急展開な終わり方をします。その大きな原因は、ゲーム内3日(1日目:キャラ紹介、2日目:事件発生、3日目:すべてが明らかに!! ってな感じ)しかないため、「積み重ね期間の不足」ではないかと思思っています。「積み重ね」というのは前述の「思い出」であったり、各キャラクターの個性(キャラを立てる準備とかそういう意味。)であったり、伏線や設定といったシナリオの仕掛けのことです。ちなみに、今回謎だった部分や伏線は、今後の展開で明らかになるとのことです。

 テキスト部分については、概ね前回と同じ印象。シナリオ書き直しによる「以前とは違うゲームです(ペーパーより)」宣言がありますので、全面書き直しでよっぽど印象が違うんだろう、と思ってましたがあまり変化はないです。追加されたところはともかく、大半がほぼそのまま残っているんじゃないかな、というのが正直なところです。
▼イラスト・グラフィック
 キャラクターのグラフィック関連は、以前と同じでシルエット。パッケージやCD盤面にちゃんと起こしたキャラクターのイラストがあったりするのですが、最終的に差し替えるのか制作者がイメージ作りに使ってるのか分からない状態です。シナリオ・テキストの項目でも記しましたが、数名の新キャラクター用にシルエットが追加されています。背景画像はいくつか追加されています。神社関連は間違いないとして、真由美宅の階段とか見覚えがないような。
▼サウンド・SE
 サウンド関連は2曲追加とのことです。でも、相変わらずSEはナシです。一応、バトルっぽいところもあるんですが、おかげで迫力ないです。手に汗握れないテキストというのもありますけど。
▼総評
 実のところ、どう評価していいのか悩みどころだったりしてます。
 や! 決してタダでもらったから、とかいうワケではありませんよ?
 初めて手に取ったのは2002年の夏コミVer、最後に触れのは2003年の春レヴォVer。とりあえず、このふたつをプレイしたということを前提としておきます。また「半年以上前に遊んだものの体験版の詳細なんて覚えてね〜」というのが本音なので、比較部分で事実誤認があるかもしれません。ごめんなさい。

 なにが悩みどころかといえば、ペーパーの「シナリオを新規に書き直し!(以前とは違うゲームです)」という言葉です。少なくとも2つの意味にとれるので、どう判断していいのか分からないのです。
 1つめは「春レヴォVerとは『違うゲーム』です」という意味。春レヴォVerでは、(確か)妹ルートと呼べるシナリオでした。今作はヒロインのひとりである緋山ルートと呼ぶシナリオです。7割方共通しているとはいえ、確かに結末は違うので「違うゲーム」と言われればその通り。ですが、ひとつのゲームにヒロインの数だけシナリオがあっても、それぞれのシナリオを指して「違うゲーム」とは言いません。
 ふたつめは「シナリオを書き直したから、以前のものは破棄」と取れることです。つまり、春レヴォVerはなかったことに、もしくは完全に作り直します、という風にも取れます。前回のシナリオが収録されてないことも、この考えを助長しています。 このふたつのどちらを取るかで少し評価が変化するところが「悩みどころ」なワケなのです。はい。

 純粋にできたものだけを評価するなら、よくいって現状維持。新たな追加、変更要素も劇的な質向上には役立っておらず、よっぽど細かく見ないと前回との違いが分からないからです。欲をいえば、誰が喋っているかの判別は小手先の変化ではなく、テキストで示して貰いたい。もっとも現在のように、誰がどういうキャラか分かる前にゲームが終わるようでは難しいと思いますが。
 シナリオ面は「悩みどころ・その1」ならば1シナリオ分前進、「悩みどころ・その2」なら現状維持、といったところ。1年かけても現状維持、というのはどう考えてもプラス評価じゃないんですよね。しかも全体的なボリューム不足…………というよりシナリオの密度がスカスカ気味なので、その辺りをどうにか補強したほうがよいと思います。さらに付け加えるなら、いくつか配置されている選択肢のほとんどが意味をなしておらず、春レヴォVerと同じ状態。もし春レヴォVerシナリオを破棄していないなら、それらを活かす(フラグ関連の試作という面も持つはず)ためにも今回収録する、という選択肢もあったと思います。

 個人的には、積極的に人に勧められるソフトでありません。おおっ、伝奇だ! と(かすかに)感じる頃にはエンディング直前、というのはあまり面白くないですしね(以前の体験版でキモとなるネタバレを知っていたからかもしれませんけど)。巻き込まれ型のシナリオで、ラストシーン直前まで巻き込まれたまま(真相は黒幕が全部喋ってくれる。バレバレのヒントはあるが、回数が極めて少ない)でも楽しめるような人ならどうぞ。そうでなかったとしても体験版がDLできるようですので、落として試してみるといいかもしれません。
 この春のレヴォには新シナリオを発表するとのことです。たぶん、残りは2シナリオ。これをバラバラにして発表するのか、まとめて発表するのかわりませんが、これまでの進捗スピードとフラグ管理を含めたシナリオ全体の構成をこれから始めるとすれば、年内に完成するかどうか、といったところではないでしょうか。


 ただ「以前とは違う〜」の基準が、私の持ってない2003夏コミVer(存在するかどうか分かりません)だった場合、だいぶ言いがかりなところがあると思うので、そうだった時は………………どうしましょう(答:どうにもできません)。
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